この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『黄色い星の子供たち』-ナチ占領下のパリで起こったユダヤ人一斉検挙事件と『大阪維新の会』の橋下徹と

2011-10-16 20:49:07 | 最近見た映画


               【 2011年10月1日 】 京都シネマ


 映画を見終わって、《心をふるわされ、身震いする》というものは滅多にない。今まで《ナチの非人道的なホロコースト》を扱った映画を過去多数見てきたが、今回のはまさに、それだった。

 『独裁者』、『シンドラーのリスト』、『アウシュビッツの女囚』、『サンドイッチの年』、『ふたりのトスカーナ』、『ぼくの神様』、『ピエロの赤い鼻』-どれも感動作だが、『黄色い星の子供たち』 は5本の指に入る秀作だ。
 

                                     


  



 今までの映画でユダヤ人が強制収容される場面は、アウシュビッツの入り口に着いてから列車を降ろされ、長い列をつくって収容所に入れられる場面が多かったが、それだと《ユダヤ人はそうされるべき運命の【特殊な人々】》という固定観念が見る人に植え付けられてしまう。
 それまで普通に生活していた、特別でもなんでもない人々であるという描写がもっと必要だった。従来の映画ではそこが見えにくかった。
 


                  



 この映画に描かれた『ヴェル・ディヴ事件』は衝撃だ。それまで他のフランス人と何ら変わらない仲間同士の生活をしていた人々が、ある日突然、区別され訳もなくレッテルを貼られ《黄色い星印のワッペンを胸に貼ることを強制され》、市民としての自由を奪われ、権利を剥奪され、強制収容される。

 そうした前兆が無かったわけではなかった。しかし、多くの人は、まさか占領軍であるナチスではないフランスの警察が、そこまではしないだろうと思っていた。



               



 その点でも、ドイツ本国で行われた《強制収容》とは違って、フランスでの《強制収容》は別のやり切れない気持ちになる。
 自らの政府の人間が決めるのでなく、侵略者が突然やってきて、不条理な命令を突きつける。ビシー政府の首脳がドイツ軍にすり寄るのはわかっていも、行政を実際に担当する末端の組織の役人の心境はどんなものかと察すると、より複雑な感情に襲われる。


 黄色の星印をつけて登校した生徒を教師はかばい、友達は今までと同じように接しようとする。

 一方、ワッペン民衆の中にも、《これ見よがし》に連行される人に唾を吐きかけるような態度をとる人もいるが、大半の人が戸惑い、また抵抗の意思をしめしたり、実際行動を起した人もいた。


 連れて行かれたところは、市内の「冬期自転車競技場」(ヴェル・ディヴ)で、まさかその後、多くの収容者が《アウシュビッツ等の絶滅収容所》のガス室に送られるとは考えてもいなかった。



  



 『アンネの日記』のような個別の1つのケースとしてでなく、パリの日常の生活の中で、パリ市全域での、数万人の単位で繰り広げられていたという実際の事件の描写が、リアルな感覚を引き起こす。

 やり場のない気持ちでいっぱいなのだが、それでも救われるのは、レジスタンスのほか、多くの市民が《ユダヤ人》を匿い、当局が予定した半数しか拘束できなかったという事実だ。『サンドイッチの年』の《ラビンスキー》を匿った婦人もその一人に違いない。




             


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 映画の話から外れるが、こんな悲しい出来事を二度と起してはいけないと思った時に、《ヒトラーのような男を、どうしてドイツ国民は選んでしまい、独裁を許してしまったか》ということを考える。
 

 庶民に改革的なことを掲げ、多少人気があり、弁舌がたち、内容抜きに人を惹きつける才能を持ち合わせ、たまたま選挙で大多数を取った人物が野心家で、『自分にすべてのことがまかされた。』と。そう思って、次の野望の手を打ってきても、その危険な思想が見抜けず迎合すると、野心家は独裁者となり、暴走を止められなくなる。そう考えたとき、今最も危険な人物は、『大阪維新の会』を率いる大阪府の橋下知事だ。彼は、1回の選挙で『自分が府民に人気があり、全て信任されていて、何でもやっていい』と思っている。《憲法の条文も、他の法律も念頭に無い》かのように、あたかも自分が全能者のように振舞っている。


    ○      ○      ○ 

 
 
 この映画と併せて、是非「サンドイッチの年」を観てもらいたい。『黄色い星の子供たち』が前編で『サンドイッチの年』が後編というか第2部という関係になるか。作り方は全然違うが、対照的なだけにいっそう感慨深いものになる。


          
              『黄色い星の子供たち』-公式サイト




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