令和元年5月21日(火)
映画 羅生門
この映画は芥川龍之介の短編小説「羅生門」と
「藪の中」を基に、黒澤明と橋本忍が共同で執筆、
黒澤明が大映映画で監督した作品である。
作品は、国内、殊に大映では余り評価されぬ時、
この映画を見たイタリアの映画関係者が、絶賛し
ぜひにとベネチア国際映画祭へ出品し、最高賞の
金獅子賞を獲得した。
海外では、黒澤明監督の作品として高く評価され
数々の賞を得た。当初この映画を酷評した大映の
永田雅一はその後豹変し、さも自分の手柄の様に
振る舞う。
物語は、戦乱と天変地異により飢餓が続く平安
時代の或る日、藪の中で昼寝をしていた盗賊の
前を侍の夫婦が通った。その妻の美貌に目を付け
た盗賊が、侍を縛り上げてその目の前で妻を犯す。
後に侍を殺しその妻と逃亡した、、、。
この事件を巡り、検非違使の前に呼び出され、
盗賊、妻、巫女の霊媒に呼び出された侍が証言。
それぞれに食い違う証言、、、、
それを目にした杣売りと旅法師が雨宿りした折り
居合わせた下人に語り掛ける。
そこに赤ん坊の泣き声が聞こえ、、、、。
小説では、朽ち果てた羅城門で老婆が遺体の髪を
抜き取り髷にして売る。そこへ下人が老婆を襲い
衣服を剥ぎ取る。
この二つを組み合わせて映画化した黒澤明監督。
「生きるために仕方なく人を殺す、罪の連鎖と
自分の保身のために、夫々に偽証する、真相は
藪の中、、、、、」
今になって、この映画の言わんとする事が少し
判ったような気がする。現代の社会にそのまま
通用する様で、、黒澤明監督の先見の明か。
生きるため止むを得ず犯罪を繰り返す人、、
忖度、保身のために平気で偽証する政治家達。
全ては藪の中(闇の中)
映画「羅生門」: 1950年、大映京都撮影所
スタッフ
監督 : 黒澤 明
原作 : 芥川龍之介「羅生門」「藪の中」
脚本 : 黒澤 明、橋本 忍
撮影 : 宮川 一夫、 照明 : 岡本 健一
音楽 : 早坂 文雄、 録音 : 大谷 巌
美術 : 松山 崇、 記録 : 野上 照代
キャスト
多襄丸(盗賊) : 三船 敏郎
金沢武弘(侍) : 森 雅之
真砂(妻) : 京 マチ子
杣売り : 志村 僑
旅法師 : 千秋 実
下 人 : 上田吉二郎
巫女(霊媒師) : 本間 文子
放免(下司) : 加藤 大介
物 語
戦乱が続き、天変地異により疫病が広がり、政治も
退廃して飢饉にさらされる平安の初期の京都、、
荒れ果てた羅城門に男三人が雨宿りしている。
杣売りと旅法師が或る事件」の参考人として出頭
した検非違使の帰り途である。
居合わせた下人に、取り調べの不思議な話を語る。
実は、杣売りは事件」の目撃者で事実を知っている
のだが、、、。
数日前、薪を取りに山に入った杣売りは、武士の
遺体を発見した。現場には、女の笠、踏みにじられ
た侍烏帽子等が、、、、
道中で侍夫婦に出会った旅法師も出廷し、証言した。
最初に、侍の金沢を殺した盗賊の多襄丸が証言する。
「山中で寝ていた所、侍夫婦に出会った。
妻女が美しかったので、侍を騙し縛り上げ、侍の眼前
で妻女を手籠めにした。 その後、妻女が勝った方の
妻になる、と言ったので侍の縄を解き正々堂々と
戦い、勝ったが、その間に妻女が逃げた」と証言。
次に妻女の真砂は、
「手籠めにされた後、多襄丸は夫(金沢)を殺さず
そのまま逃げた。夫を助けようとしたが、眼前で男に
身を任せた私(真砂)を蔑む眼差しで見据えた。
それに耐えられなくなり、夫に私を殺す様に願った
が、叶わず、その後気絶した。 目が覚めると夫は
短刀で刺され死んでいた。自分も死のうと思ったが
死ねなかった」と証言した。
その後、巫女が呼ばれ、霊媒により死んだ金沢を呼び
出し証言させる。
金沢の霊は、
「真砂は多襄丸に辱められた後、彼(多襄丸)に情を
移し、多襄丸に同行する代わりに自分の夫(私)を殺
す事を求めた。 それを聞いた多襄丸はあきれ果て、
「女を生かすも殺すもお前が決めろ」と私(「金沢)
に告げた。それを聞いた真砂は逃亡し、多襄丸も後で
姿を消した。一人残された自分(金沢)は無念の余り
妻の短刀で自害した」と証言。
この話を下人に話した杣売りは「三人とも嘘をついて
いる」と言った。 杣売りは実は事件を見て居り
事実を知っていたが、事に巻き込まれるのを恐れて
黙っていた。
「多襄丸は手籠めにした後で妻に惚れ、俺の妻にと
頼むが断られ、金沢の縄を解く。亦、金沢は辱めを
受けた妻に自害をせまる、、。 真砂は笑い出し
自分勝手な男たちを戦わせ、殺し合いをさせる。
必死の戦いの末、金沢は刺されて死ぬ、、、、。
真砂は事の重大さ、恐ろしさにその場を逃げ出す。
三人の告白は、己の見栄のための虚言」である。
情けない真実に、旅法師は世を儚む、、、、。
その時、羅城門の門前の方から赤子の泣き声が、、
誰かが赤ん坊を捨てたようである。
下人は迷うことなく、赤子の着物を剥ぎ取り、赤子
を放置する。
杣売りが咎めるが、下人は「遺体の現場から無くな
った金沢の太刀や短刀を盗ったのはお前だろうが、
お前に俺を非難する資格はない」と言い、その場を
出て行く、、、、、
旅法師が思はぬ成行きに絶望していると、杣売りが
近づき、赤ん坊に手を伸ばす、、旅法師が手を払い
のけると、「自分の子として育てます」と言い残し
杣売りは赤子を抱きかかえて、去って行った、、。
最後に、 人間の良心を見た旅法師は己の不明を
恥じて合掌する、、、、。
今日の1句
青嵐吹き抜ける儘藪の中 ヤギ爺
映画 羅生門
この映画は芥川龍之介の短編小説「羅生門」と
「藪の中」を基に、黒澤明と橋本忍が共同で執筆、
黒澤明が大映映画で監督した作品である。
作品は、国内、殊に大映では余り評価されぬ時、
この映画を見たイタリアの映画関係者が、絶賛し
ぜひにとベネチア国際映画祭へ出品し、最高賞の
金獅子賞を獲得した。
海外では、黒澤明監督の作品として高く評価され
数々の賞を得た。当初この映画を酷評した大映の
永田雅一はその後豹変し、さも自分の手柄の様に
振る舞う。
物語は、戦乱と天変地異により飢餓が続く平安
時代の或る日、藪の中で昼寝をしていた盗賊の
前を侍の夫婦が通った。その妻の美貌に目を付け
た盗賊が、侍を縛り上げてその目の前で妻を犯す。
後に侍を殺しその妻と逃亡した、、、。
この事件を巡り、検非違使の前に呼び出され、
盗賊、妻、巫女の霊媒に呼び出された侍が証言。
それぞれに食い違う証言、、、、
それを目にした杣売りと旅法師が雨宿りした折り
居合わせた下人に語り掛ける。
そこに赤ん坊の泣き声が聞こえ、、、、。
小説では、朽ち果てた羅城門で老婆が遺体の髪を
抜き取り髷にして売る。そこへ下人が老婆を襲い
衣服を剥ぎ取る。
この二つを組み合わせて映画化した黒澤明監督。
「生きるために仕方なく人を殺す、罪の連鎖と
自分の保身のために、夫々に偽証する、真相は
藪の中、、、、、」
今になって、この映画の言わんとする事が少し
判ったような気がする。現代の社会にそのまま
通用する様で、、黒澤明監督の先見の明か。
生きるため止むを得ず犯罪を繰り返す人、、
忖度、保身のために平気で偽証する政治家達。
全ては藪の中(闇の中)
映画「羅生門」: 1950年、大映京都撮影所
スタッフ
監督 : 黒澤 明
原作 : 芥川龍之介「羅生門」「藪の中」
脚本 : 黒澤 明、橋本 忍
撮影 : 宮川 一夫、 照明 : 岡本 健一
音楽 : 早坂 文雄、 録音 : 大谷 巌
美術 : 松山 崇、 記録 : 野上 照代
キャスト
多襄丸(盗賊) : 三船 敏郎
金沢武弘(侍) : 森 雅之
真砂(妻) : 京 マチ子
杣売り : 志村 僑
旅法師 : 千秋 実
下 人 : 上田吉二郎
巫女(霊媒師) : 本間 文子
放免(下司) : 加藤 大介
物 語
戦乱が続き、天変地異により疫病が広がり、政治も
退廃して飢饉にさらされる平安の初期の京都、、
荒れ果てた羅城門に男三人が雨宿りしている。
杣売りと旅法師が或る事件」の参考人として出頭
した検非違使の帰り途である。
居合わせた下人に、取り調べの不思議な話を語る。
実は、杣売りは事件」の目撃者で事実を知っている
のだが、、、。
数日前、薪を取りに山に入った杣売りは、武士の
遺体を発見した。現場には、女の笠、踏みにじられ
た侍烏帽子等が、、、、
道中で侍夫婦に出会った旅法師も出廷し、証言した。
最初に、侍の金沢を殺した盗賊の多襄丸が証言する。
「山中で寝ていた所、侍夫婦に出会った。
妻女が美しかったので、侍を騙し縛り上げ、侍の眼前
で妻女を手籠めにした。 その後、妻女が勝った方の
妻になる、と言ったので侍の縄を解き正々堂々と
戦い、勝ったが、その間に妻女が逃げた」と証言。
次に妻女の真砂は、
「手籠めにされた後、多襄丸は夫(金沢)を殺さず
そのまま逃げた。夫を助けようとしたが、眼前で男に
身を任せた私(真砂)を蔑む眼差しで見据えた。
それに耐えられなくなり、夫に私を殺す様に願った
が、叶わず、その後気絶した。 目が覚めると夫は
短刀で刺され死んでいた。自分も死のうと思ったが
死ねなかった」と証言した。
その後、巫女が呼ばれ、霊媒により死んだ金沢を呼び
出し証言させる。
金沢の霊は、
「真砂は多襄丸に辱められた後、彼(多襄丸)に情を
移し、多襄丸に同行する代わりに自分の夫(私)を殺
す事を求めた。 それを聞いた多襄丸はあきれ果て、
「女を生かすも殺すもお前が決めろ」と私(「金沢)
に告げた。それを聞いた真砂は逃亡し、多襄丸も後で
姿を消した。一人残された自分(金沢)は無念の余り
妻の短刀で自害した」と証言。
この話を下人に話した杣売りは「三人とも嘘をついて
いる」と言った。 杣売りは実は事件を見て居り
事実を知っていたが、事に巻き込まれるのを恐れて
黙っていた。
「多襄丸は手籠めにした後で妻に惚れ、俺の妻にと
頼むが断られ、金沢の縄を解く。亦、金沢は辱めを
受けた妻に自害をせまる、、。 真砂は笑い出し
自分勝手な男たちを戦わせ、殺し合いをさせる。
必死の戦いの末、金沢は刺されて死ぬ、、、、。
真砂は事の重大さ、恐ろしさにその場を逃げ出す。
三人の告白は、己の見栄のための虚言」である。
情けない真実に、旅法師は世を儚む、、、、。
その時、羅城門の門前の方から赤子の泣き声が、、
誰かが赤ん坊を捨てたようである。
下人は迷うことなく、赤子の着物を剥ぎ取り、赤子
を放置する。
杣売りが咎めるが、下人は「遺体の現場から無くな
った金沢の太刀や短刀を盗ったのはお前だろうが、
お前に俺を非難する資格はない」と言い、その場を
出て行く、、、、、
旅法師が思はぬ成行きに絶望していると、杣売りが
近づき、赤ん坊に手を伸ばす、、旅法師が手を払い
のけると、「自分の子として育てます」と言い残し
杣売りは赤子を抱きかかえて、去って行った、、。
最後に、 人間の良心を見た旅法師は己の不明を
恥じて合掌する、、、、。
今日の1句
青嵐吹き抜ける儘藪の中 ヤギ爺
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