矢嶋武弘・Takehiroの部屋

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瀬戸内寂聴(晴美)さんのこと

2024年12月29日 04時19分57秒 | フジテレビ関係

<瀬戸内寂聴さんは2021年11月9日に他界されました。享年99歳。この記事は2015年6月に書いたものです。>

先日、作家で文化勲章受章者、僧侶の瀬戸内寂聴さんが、新安保法案に反対し「反安部」の強い決意を表明して大きな話題となった。その模様を見て私も感銘し、彼女の小説『夏の終り』などを初めて読んだしだいである。
93歳の瀬戸内さんが“反戦”にかける思いは強烈なもので、それはご自身の体験に深く根ざしたものだ。ここで彼女の体験談を紹介するのは時間の都合で省くが、瀬戸内さんの小説を読んでいて、どうしても過去の思い出を書きたくなった。そういうことでご了承願いたい。
もう50年近くも昔のことだが、私がFテレビの“駆け出し”報道部員だったころ、年末に「今年の100人」という報道特番を放送することになった。その年の話題になった100人をスタジオに呼ぼうという、当時としては珍しく大がかりな番組であった。
先輩のMプロデューサーの号令一下、われわれスタッフは手分けをして話題の人に当たっていったが、その中には政治家や芸能人はもとより、サッカーの釜本邦茂選手や建築家の丹下健三氏、はては革マル派全学連の成岡庸治委員長ら多彩な顔ぶれが含まれていた。そうした中で、文学界の“話題の人”として瀬戸内晴美さんの名前が浮かんだのである。
「瀬戸内晴美」とは寂聴さんの旧名だが、Mプロデューサーは私に出演交渉をしろと言ってきた。しかし、私は流行作家のことはよく知らないし、まして彼女の小説を読んだこともない。そこで断ろうとしたが、Mさんは「お前がやれ」と言ってきかない。スタッフの人数も少ないから、わがままは言えないのだ。
不承不承、私は瀬戸内晴美さんの出演交渉をすることになった。なんでも彼女は「出家する」とか言って、関西方面へ行ってしまったそうだ。そこで地元のテレビ局などに問い合わせたりして、やっと彼女の居所を突きとめた。大阪のある寺に潜んでいたのである。寺の名前はもう忘れたが、瀬戸内さんはそこで修行をしているらしい。
みるみるうちに私はやる気になった。彼女の居所さえ分かれば、もうこっちのものだ(笑)。報道部員というのは行方不明者や容疑者などを探す仕事が多い。私は女性を“口説く”のは下手だが、その人の居所が分かれば、もう大丈夫だと思ったのである。
私は自信を持って寺に電話をかけた。瀬戸内さんが電話口に出てきた。それから何を話したかは、50年近くも前なのでよく覚えていない。ただ、彼女は澄んだ声で受け答えしていたように思う。そして、とても丁寧に答えてくれたと思う。途中で電話を切るようなことはしなかった。
どのくらい話しただろうか。わりと長かったようだ。彼女はたしか「修行中」だということを何度も繰り返し、番組出演を断ったと記憶している。ということは、私が何度もしつこく出演を要請したということだ。しかし、瀬戸内さんは固く辞退した。私は諦めて電話を切った。そのことをMプロデューサーに報告したが、彼は何も言わなかった。
そんな思い出が瀬戸内さんとの間にはあるが、50年近くも前のことを彼女は覚えていないだろう(笑)。しかし、私はどうしても忘れられないのだ。寂聴さんはいま93歳だが、なおご健在で活躍されることを祈る。最後に遅ればせながら、私は彼女の小説を読んでいこう。(2015年6月25日)

晩年の寂聴さん・・・http://iwj.co.jp/wj/open/archives/249732


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2 コメント

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Unknown (おキヨ)
2020-05-09 13:42:59
電話でとはいえ寂聴さんと長話をされたんですね!すごいことです。
瀬戸内晴美時代の彼女の作品は2,3読んでいます。寂聴になってからの作品も読みましたが環境のせいか、お年のせいか、あっけらかんとした、または淡々とした文体になっています。
とうぜんでしょうね(^^)
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瀬戸内さん (矢嶋武弘)
2020-05-10 09:44:25
瀬戸内さんに出演交渉をして断られたことは今でも忘れられません。けっこう長く話しましたね。
出演は駄目になったのですが、彼女の応対はとても丁寧で誠実な感じでした。瀬戸内さんと話せたので、私もつい長くなったのでしょう(笑)。
彼女の小説を少し読みましたが、正直言ってあまり惹かれませんでした。
それよりも、彼女の社会活動や評論の方が魅力的です。その方に惹かれました。
瀬戸内さんももうすぐ98歳、なおお元気で活動されることを願ってやみません。
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