イメージイラストは、THESEIJI今西精二先生の作品です。
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腐敗惑星のアリスー第6回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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yamadakikaku2009ーyoutube
■「お前、デッキマンだね。それも新米の」
占いの巫女が連邦軍ミラー伍長に言った。ここ惑星ピラトのシオクマ・シティの盛り場だ。
5年前、宇宙の中心星ピラトのオクマ・シティだった。ミラーが連邦宇宙大学
を卒業した頃だ。配属先は星庁の管轄下にある監視機構であった。
「そうだよ、それがどうしたのだ」いぶかしげにミラーは答える。
荒手の募金活動じゃないだろうな。ミラーはこの種の募金にうんざりしていた。
いわく宇宙戦役募金だの、戦争孤児募金だの、宇宙植民募金だの…
「お前にいいことを教えてあげようじゃないか」
巫女はにやりと笑う。
危ないぞ、こんな奴に限ってオアシが高いのにきまっている。
「いらないよ、占いのおし売りはお断りだ」
ミラーは足早に立ちさろうとした。
が、うしろから巫女がうむをいわさぬ調子で言葉を投げ
かけてきた。
「世界最高の宝を欲しくはないのかい」
その言葉にミラーは急に振り向く
「それは何だ」
ミラーは興味シンシンの顔をした。
「ほほっ、興味を持ったね。教えてあげよう、特別にね」
「もったいぶるなよ」
「禁断の実だよ。それについての情報だよ」
「禁断の実だって、そいつは『新生神書』の『最後の楽園』に出てくる神話じゃないのか」
「それくらいしか、知らないのかい。見たところ、連邦軍に努めているらしいけど。
この言葉の深い意味もしらないようじゃたいしたことはないね。お前も、
もっと歴史をお知り、そうすれば、私がいった意味もわかるさ」
軽蔑するように、首をふりながら巫女の彼女は言った。
「でも気をおつけ、その禁断の実にさわる時はね」
ミラーの方をその節くれだった指でさした。
「俺は禁断の実を持てるのか」
「そうさ。おまけに、お前は「古代世界」をかいま見ることができるだろうがね」
「古代世界?,「かいま」だと、どういう意味だ」
「前年ながらもう、今日の占いはおしまいさ」
気味の悪い占いの終り方だ。
「どういう意味だ。俺がそこで死ぬとでもいうのか」
「しかたがないね。おまけに、もう1つヒントをあげるよ。そう、腐敗惑星についてお知らべ。
これで本当におしまいさ」
「なんだって、腐敗惑星だって、あの汚染された星か」
「いいかい、これで、私のお前さんの未来の占いは終りだ」
ミラーは10ソブリン銀貨を巫女に投げあたえた。
「いい事を聞かせてくれたな、お礼だ」
「いらないよ。今夜はサービスだよ」
巫女の姿は急に、若い美女に変身する。
「あ、おい、待てよ。消えた」
ミラーは体をふるわす。寒気が急に襲ったのだ。
「今のは悪い夢じゃなかったのか」
が、ミラーの見たのは夢ではなかった。
■宇宙連邦軍、ミラー伍長はそれから必死で資料を探している。
ここは連邦軍監視機構の研修センターである。
「ミラーくん、隣に座っていいかな」
大学の先輩であるスニンがミラーに話しかける。
「あ、どうぞ、スニン先輩いや中尉」
「どうだね、勉強は進んでいるかね」
「ええ、何とか、連邦軍監視機構の研修についていこうと必死ですよ」
「ところで、君、何の本を読んでいるのかね」
スニン中尉は急にミラーの読んでいる本の表紙を持ち上げようとした。
慌てて、それを隠そうとするミラー。が、表紙が見えてしまった。
「新生神書」である。
「おや、おや、君も中々信心深いようだね」
「いえ、それほどでもありません」
「君は隠れ宗教活動家ではあるまいな」
「まさか、そんなことはありえません」
「ミラーくん、率直に聞こう。君は、腐敗惑星へ赴任したいかね」
腐敗惑星だと、なぜだ。なぜこいつは知っている。
ひょっとして、いやぐうぜんということもあるな。ミラーは、できるだけ平静を装うとした。
「続けて聞こう。君は「禁断の実」を探したいかね」
ミラーはこの言葉を聞き、顔が青ざめるのが自分でもわかった。
なぜ、この先輩スニン中尉が、あの夜の占いを知っているのだ。
「ミラーくん、我々は君をスカウトしにきたのだ。安心したまえ」
やっと、ミラーの声が出た。いささかかすれていたが。
「いったい、あなたは」
スニン中尉に向かいミラー伍長はたづねた。
「むろん我々は「ダークサイド」の人間だよ。ミラー伍長君」
「ダークサイド」、連邦軍にもはびこる裏社会の結社だ。
(続く)20210903改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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