■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(6&7)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
http://ameblo.jp/yamadabook/
(6)
地下大空洞に声が響き渡っている。
「皆、剣を下げよ。これ以上の戦いは無用だ。シュトルフ、全員に命じろ」意外なことにクルトフが命令していた。
「しかし、クルトフ様」
シュトルフが抗弁しようとする。
「だまれ、シュトルフ。ロセンデール様がなくなった今、これ以上は無用だ。我々はもう空母も機械城もないのだぞ」
「そうです。公式には日本と神聖ゲルマン帝国は交戦していないのです」徳川公が言葉を継いだ。
「我々としては心柱が目覚められた現在、わざわざことを荒立てる必要はない」
斎藤も一言加える。
「それゆえ、我々は武装を解除します。よろしいな、シュタイフくん」
「はっ。クルトフさま」
シュタイフは渋々命令に従う。聖騎士団は、武器を下げた。
シュタイフの胸の内にはにがいものが込み上げてきた。
『ロセンデール殿下、お許しください。私はあなたをお守りできませんでした。このクルトフめは、一三人の諸公のうちの誰かから、ロセンデール殿下を滅ぼすために遣わされたに違いないのです。その証拠を握ることはできませんでした。殿下、この敵は必ず…』
(7)
「反乱ロボットの諸君も鉾を納めていただきたい」
反乱ロボットの方へ向き直り、徳川公は語り掛ける。
「なぜだ」
「君たちの目的は自らの身分制度打破であろう。ゲルマン帝国との戦いが目的ではないはずだ。今のままではゲルマン帝国との戦いになってしまう」
徳川公はじゅんじゅんと諭した。
「それでは足毛布博士を我々に渡していただこう」
「何と」
「足毛布博士を血祭りに上げる」
反乱ロボットたちは言った。
「そうだ。そうしなければ我々の憤りは吐けぬ。何のために多くの仲間が死んでいったことか」
足毛布博士が、他の人々の群れから押し出されてきた。
「足毛布博士に手を出すこと、拙者が許さぬ」 主水は叫んでいる。
「主水殿、どうなされた」
皆が驚いている。
「貴公、我々を裏切るおつもりか」
「お許し下され、皆々様。やはり、足毛布博士は父でございます」
悲しげに主水は言う。
「が、主水殿。我々反乱ロボットの目的の一つは、足毛布博士の処刑ですぞ」
「そうだよ、主水のおじさん。おいらたち子供ロボットが偉い目にあったのもみんなこの男のせいなんだよー」
知恵が言う。
「もうよい、主水。私をおとなしく反乱ロボットたちに渡せ。そうしないとお前の命も危ない」
足毛布博士は言う。
その様子を見ているレイモンは隣にいる夜叉丸に小声でささやく。
『博士も役者よのう。夜叉丸、まあ様子を見ておれい。面白いことが起こるぞ』
「それは、一体」
主水が反乱ロボットに押さえられている。足毛布博士を跪かせ、数人のロボットが刀を元上げる。
足毛布博士は頭を項垂れている。
刀を降り下げようとする。が、一瞬後、体が動かなくなる。
「これはどうしたことだ」
「どけ、私が変わる」
何人ものロボットが、続々と足毛布博士の首を撥ねようとするが、それができない。
体が固定してしまう。
足毛布博士がゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと反乱ロボットに向かう。慢心の笑みが浮かんでいる。それも皮肉な笑みだ。
「よいかロボットの諸君。私は君たちの父なのだ。父は子供のICチップに最終指令をコマンドしてあるのだ。私を殺さぬようにな。このコマンドは君らの心の奥深くに埋め込まれている。誰も気付かぬ。またいかなるロボット工学博士でも、そのコマンドは解除することができぬのだ」
「足毛布博士、流石よのう」
水野が叫んでいた。西日本都市連合のロボット軍隊がいつのまにか、古代都市の大空洞に結集していた。
(続く)
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(6)
地下大空洞に声が響き渡っている。
「皆、剣を下げよ。これ以上の戦いは無用だ。シュトルフ、全員に命じろ」意外なことにクルトフが命令していた。
「しかし、クルトフ様」
シュトルフが抗弁しようとする。
「だまれ、シュトルフ。ロセンデール様がなくなった今、これ以上は無用だ。我々はもう空母も機械城もないのだぞ」
「そうです。公式には日本と神聖ゲルマン帝国は交戦していないのです」徳川公が言葉を継いだ。
「我々としては心柱が目覚められた現在、わざわざことを荒立てる必要はない」
斎藤も一言加える。
「それゆえ、我々は武装を解除します。よろしいな、シュタイフくん」
「はっ。クルトフさま」
シュタイフは渋々命令に従う。聖騎士団は、武器を下げた。
シュタイフの胸の内にはにがいものが込み上げてきた。
『ロセンデール殿下、お許しください。私はあなたをお守りできませんでした。このクルトフめは、一三人の諸公のうちの誰かから、ロセンデール殿下を滅ぼすために遣わされたに違いないのです。その証拠を握ることはできませんでした。殿下、この敵は必ず…』
(7)
「反乱ロボットの諸君も鉾を納めていただきたい」
反乱ロボットの方へ向き直り、徳川公は語り掛ける。
「なぜだ」
「君たちの目的は自らの身分制度打破であろう。ゲルマン帝国との戦いが目的ではないはずだ。今のままではゲルマン帝国との戦いになってしまう」
徳川公はじゅんじゅんと諭した。
「それでは足毛布博士を我々に渡していただこう」
「何と」
「足毛布博士を血祭りに上げる」
反乱ロボットたちは言った。
「そうだ。そうしなければ我々の憤りは吐けぬ。何のために多くの仲間が死んでいったことか」
足毛布博士が、他の人々の群れから押し出されてきた。
「足毛布博士に手を出すこと、拙者が許さぬ」 主水は叫んでいる。
「主水殿、どうなされた」
皆が驚いている。
「貴公、我々を裏切るおつもりか」
「お許し下され、皆々様。やはり、足毛布博士は父でございます」
悲しげに主水は言う。
「が、主水殿。我々反乱ロボットの目的の一つは、足毛布博士の処刑ですぞ」
「そうだよ、主水のおじさん。おいらたち子供ロボットが偉い目にあったのもみんなこの男のせいなんだよー」
知恵が言う。
「もうよい、主水。私をおとなしく反乱ロボットたちに渡せ。そうしないとお前の命も危ない」
足毛布博士は言う。
その様子を見ているレイモンは隣にいる夜叉丸に小声でささやく。
『博士も役者よのう。夜叉丸、まあ様子を見ておれい。面白いことが起こるぞ』
「それは、一体」
主水が反乱ロボットに押さえられている。足毛布博士を跪かせ、数人のロボットが刀を元上げる。
足毛布博士は頭を項垂れている。
刀を降り下げようとする。が、一瞬後、体が動かなくなる。
「これはどうしたことだ」
「どけ、私が変わる」
何人ものロボットが、続々と足毛布博士の首を撥ねようとするが、それができない。
体が固定してしまう。
足毛布博士がゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと反乱ロボットに向かう。慢心の笑みが浮かんでいる。それも皮肉な笑みだ。
「よいかロボットの諸君。私は君たちの父なのだ。父は子供のICチップに最終指令をコマンドしてあるのだ。私を殺さぬようにな。このコマンドは君らの心の奥深くに埋め込まれている。誰も気付かぬ。またいかなるロボット工学博士でも、そのコマンドは解除することができぬのだ」
「足毛布博士、流石よのう」
水野が叫んでいた。西日本都市連合のロボット軍隊がいつのまにか、古代都市の大空洞に結集していた。
(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(6&7)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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