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アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー★第15回●

2015年09月11日 | アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産

 

 
アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー★第15回●
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
「マンガ家になる塾」 山田企画事務所
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腐敗惑星である腐肉の地表上を、トリニティは歩んでいた。
「何よ。これ、ここが地表なの。ここを歩けというの」

「しかたがないじゃろう」地下羊宮の擬似映像チャクラの声が、服の中にあるモニターから流れてきた。
「お願いだから、羊宮に戻してよ」
「だめなのものはだめじゃ」

 腐肉の大地を歩くのに最初は苦労した。今では何とか、チャクラがトリニティのために
造ってくれた特殊な靴のおかげで、沈まずに歩いていける。

 これまでのあいだ知識生命体にはあわずにいる。存在するのは腐肉を喰べていきている
小動物だけだ。あとはかってロケットや何かのわからぬ機械の残滓の山々。また延々と続
く腐肉の大地。所々にある体液や腐敗液の池だった。あまり遠くを見通すことはできない。 

「あ-あっ、地獄めぐりだわ、もう、いや」
 トリニティはマスクを顔の前につけている。

この大地の臭気を、直接肺の中にすいこんだらむせかえってしまうだろう。あの居心地の
いい地下羊宮チャクラのエアーコンディショニングの中で生長したのだから、ここは確か
に地獄だろう。

「なぜ、こんな所を歩かきゃならないの」彼女は不満を述べている。

 トリニティは何かの大きな骨格をは発見し、その上にすわって考えて始めた。

(一体《禁断の実》なんてどこにあるのかしら。実ってことは木があるわけよね。でも森
林、いえ木なんて見たことがないわ。

 ひょっとして、羊宮チャクラみたいに、地下に生存エリアにあるのかもしれない。でも
どうしたら見つけられるの。
 なぜ、ちゃんと教えてくれないのよ。早く見つけてチャクラのところへ帰りたい。こん
な所もう、うんざり。

 チャクラはそれについて何も教えてくれなかった。それとも《禁断の実》なんて、どこ
にもないのじゃないかしら。それに《禁断の実》を発見してどうしたらいいの。わからな
い事ばっかし。あたしには荷が重いわ)

 何かがトリニティを観察していた。そいつは地下で数百年の眠りからさめたところだっ
た。トリニテイの歩く感触で、そいつは敏感に目覚めたのだ。大きな音をあげてそいつは
地表にたどりつく。

 腐肉の中からようやく出現したそいつは、トリニティの前に顔を向ける。
「あなたは誰」

そいつは、トリニティに叫ぶ。

トリニティはこれが地下羊宮チャクラがつくり、逆らった「戦闘16面体」かしらと
驚いている。

(いやよ。まだ心の準備ができていないわ) 
地下羊宮チャクラの中枢頭脳は、彼女の視
線と同一化していた。彼女のみたもの、感じたものがすべて脳波となって、チャクラのと
ころへ送りつけられていた。

「しまった。あやつ、まだ生きておったのか」チャクラは独りごちた。
「あなたこそ一体誰なの」トリニティはその生物に尋ねる。


「あなたが先に名乗りなさい。この星では生きている人間など見るのはひさしぶりよ。あ
なたが生きていられる事が、不思議だわ」

「そんな事を言われてもこまる。あたしはトリニティ。チャクラに育てられたのよ」
「チャクラですって」その生物はニヤリと笑ったようだった。
「チャクラならやりかねないわね」

「どういう事なの、それ。それにあなたこそ生物でしょう。なぜこの星で生きていけるの
よ」

「ほっほっほっ、おもしろい事をいう女の子ね。なぜ私が生きているかですって、チャク
ラから聞いていないの」

「どうやら、その顔は聞いていないようねえ。それなら……」

 その生物がしゃべりかけた時、上空から突然、銀色にきらめく物体が降下してきた。
 そいつは自ら浮力を持ち、空間を自在に移動できるようだ。

(続く)20090501改定
作飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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