封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第1回●全12回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所
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それは、小さな石だった。
石は隕石となり、「大球」と呼ばれる星に落下した。
大球は、「小球」と呼ばれる衛星と絆で結びついている。
大球には、「新機類」と呼ばれる生物が生息していた。
「ルウ502」は、天空を走る光の矢を見ていた。
ユニーコーンつまり、一角獣の外形をした新機類ルウ502にとって
、隕石は見慣れた現象であり、注意をあまり払っていない。
警戒すべきは、ルウ502の足元、つまり鉄表下であると、教えられていた。
その教示は[小球]にある「生命球」から与えられていた。
念のためだ。
そう思ってルウ502は、隕石の堕ちた場所を求め、走った。
やがてその場所に辿りつく。落下地点の鉄表には、何の損傷も見られなかった。
大いなる昔、ルウ502達が誕生する前から、この星、大球に張りめぐら
された鉄表は、時の流れをあざわらうかのごとく、傷ひとつ付いてはいない。
「ハーモナイザー」と呼ばれる大球の創造者に対して畏敬の念がルウ502の心に浮かんだ。
ハーモナイザーは、ルウ502にとっても想像を絶する存在で必った。
ともかくも、鉄表には何の変化もない。
よかった。彼は安堵し走りさった。
もし、ルウ502が辛抱強い観察者であったなら、微妙な地下の変化をとらえていたかもしれない。
その変化を感じて、小球の生命球に通報していたならぱ、あるいは、この星
の歴史が変わったかもしれない。
事実、隕石は鉄表下に存在するあるもののつぼを直撃していた。隕石が鉄表に激突した時の微振動は、ある種の反応を、地下に呼びおこししていたのだ。。
鉄表の下、奥深い所に、闇に包まれた空洞がある。はるかなる昔からここに閉じ込められた者のうらみがこもっている。
隕石の与えた微振動に、「機械共生体」が反応し、生きかえりつつあった。
突然、一点に光がともる。
その光が、またたく間に、空洞内にある機械類を巡り、すべての機械群の息を吹きかえらせた。最初の機械意識が蘇った。
『誰だ、俺は』
闇の奥から疑問の声があがる。
機械は自らの存在の意味をさぐろうとする。
やがて、機械意識は自らの名前を思い出した。
『そうだ。思い出したぞ。俺はイメージコーダーだ」
イメージコーダーは次の作用として、体を勣かすことにした。腕=マニュピュレーターだった。マニュピュレーターを振り廻している内に、自分の前に集積された物体にづく。
「何だ、これは」
次の疑問だ。
目の前にある「植物繊維群」の呼称を記憶の中から呼びかこしていた。
「情報ユニットだったな、たしか」
これは何をするものなのだ。
マニュピュレーターで、それをつかみ、観察する。
「ああ、そうだ。こいつはこう使うんだ」
やがて、イメージコーダーはそれを自分の体一部位に組み人れた。
マニュピュレーターが、偶然に選びとった三ユニットは次の通りである。
ユニットコードナンバー 16589
ユニットタイトル 北の詩人
ユニットコードナンバー 836250
ユニットタイトル 幽霊列車ゴーストトレイン
ユニットコードナンバー 386574
ユニットタイドル ユニコーンの旅
イメージコーダーの温度が上がり、彼は自分の役割を果たし始める。
役割すなわち、情報ユニットのイメージを実体化させる事。
イメージコーダーの空間に、情報ユニット内に内包された情報の三次元数
字が打ちだされる。それが線を形づくり、フレーム=モデルが作りあげられる。
色彩が決定され、ゆっくりモデル表面がペイントされながら作成される。
やがて、生き物が実体化していた。
徐々に、機械群の共生体「天球てんきゅう」に意識が蘇りつつあった。
(続く)
●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第1回●(1987年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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