源義経黄金伝説■第34回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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頼朝は、皆より1段高い御矢山競技場土壇上から、西行の流鏑馬を、見
て満足しょうとした。
今、七十歳にならんとする西行は、昔のこと、北面の武士である事を
思い起こそうとしていた。この老躯に、果たして役目が務まるか。
しかし、わづかながらでも、体の反応が残っているだろう。
それにかけるしかあるまい。
まだ、我が生涯の目的のため、負けるわけにはいくまい。
当時の馬の大きさは、前脚のひずめから肩の一番高い部分までを
体高とした、日本の在来馬は、四尺(約121センチメートル)を通例とする。
軍馬の場合は少し大きく四尺三寸(約130センチメートル)が標準である。
西洋のサラブレットの体高が160~170センチメートルなので、西洋高のポニー
の大きさに相当する。
中国の軍馬の条件は130約121センチメートル以上であり、秦始皇帝の兵馬俑
にある馬俑の平均体高は、121センチメートルであり、アジア地方草原馬の
標準といえた。
当時の木製弓は、弦を外した上体では反りがなく、直線で樋のある腹側に
弦をそのまま掛けている。
木の性質から弓はしならず、世界級大きなものとなり、平均で7尺2寸
(約210センチメートル)となり、馬の体高より大きい。
弦は、麻の繊維を錬り、その上に補強のため漆を塗る、あるいは、糸で
巻き閉めてから漆を塗る。
矢は、鏃やじり矢羽、ヤガラからなる。矢の長さは、握り拳ひとつを1束とし、
十二束(約83センチメートル)が標準であった。ヤガラは本体部分で篠竹をつかう。
鏃は、武士の流鏑馬には、鏑矢が使われている。
西行は、見事に、流鏑馬を行い、的を打ち据えていた。
2度3度、流鏑馬の走路さぐりを走り終え、的をすべて当てていた。
賞賛の叫びが、下野の国足利の荘・御矢山競技場にこだましていた。
この時期は、弓矢道が戦いの常道である。戦いの主役は刀剣ではない。
頼朝は考えている。この西行の藤原秀郷流の武門の技を、まして、70歳にも
なる男の見事さを、この坂東御家人の前で、見せるのは、
頼朝は、歓声の中を、急に立ち上がった。扇子を振り上げている。
「見事だ、見事だ、西行殿、さすがは、俵の藤太。藤原秀郷どのの御子孫」
藤原秀郷は、弓矢の達人として、東国の御家人からの崇拝の的である。昔語りに
「近江、三上山の大百足を退治し、竜神から小俵、反物、鍋、武器をもらったという」
伝説が、この時代の人々に埋め込まれている。
「西行殿いかがかな、射組の試合はいかがか」
流鏑馬で、2人が合いむかい、お互いの相手を的に打ち合おうというのである。
観客から驚きの声があがって、騒がしかった。
「対戦する相手は、そうよのう、、」
頼朝は、しばし考え、口を開いた。
「そうだ、私がつとめよう」
一層の興奮が、周りの武士たちを驚かせ、感動させる。
頼朝は弓の上手として、子供の頃から有名であった。
「百発百中の芸を振るいて、合い戦うる事数度に及ぶ、
射殺すところの者これ多し」と当時の文献にある。
この坂東で、先輩にあたる京都の北面の武士と射る合いをする事も
無駄ではあるまい。と頼朝は思う。
「大殿様、それは、、」
頼朝の傍らにいた、大江広元と、文覚が、同時に叫んでいた。
続く2014改訂
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