ロボサムライ駆ける■第25回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://9vae.com http://visitjapan.info
youtube manga_training
第四章 剣闘士1)
ゆっくりと主水の意識が戻ってきた。
両眼が開く。
体の下の冷たさが感じられた。
「気が付いたかね」
見知らぬロボットの顔が主水の前にある。
「ここは」
周りを見る。ぼんやりと薄暗い冷たい石の壁。蛍光灯の照明が、天井からぶら下がって揺れていた。
厳重な扉がロボットの後ろに見える。
このロボットは僧服をきていた。
死二三郎に切り取られた左腕はそのままで、応急に処置されているだけだ。
着物も剥ぎ取られていた。まるで奴隷扱いだ。
「ここか。ここは機械城の中だ」
相手は高飛車に言う。
「お主は」
「私か。自己紹介しよう。私はロボット懐柔師サイモンだ」
「懐柔師だと、止めてくれ、私は由緒正しいロボザムライだ」
懐柔師とは、品行の良くないロボットを悔い改めさせるロボットである。聖職であった。
「これは、これは、世迷い事を、お主言っておるのう。どこにその証拠がある」
サイモンは驚きながら言う。
「この私の右肩にある桜吹雪マークと、製造コードを調べてくれればわかる」マークとコードはロボットのアイデンティである。
サイモンは念入りに主水の体を自分を見てみる。
「そのようなものはない」
「そんなはずは」主水も調べる。確かにない。
マークとコードは知らぬ間に削り取られている。身分を証明するものがないのだ。さらに、主水は続けた。
「新京都ホテルにお泊まりになっておられる、落合レイモン閣下に連絡をとってくれれば、すべてはわかる」
サイモンは連絡を取るために外に出て行ったが、やがて戻ってきた。
「レイモン閣下のご一行は、すでに京都を離れ、東日本に帰られたと聞いている。東日本政府にも連絡をとったが、早乙女主水なるロボザムライ、現在、東京市にいるとの連絡があった。我々に無駄な労力をかけさせたな。このお返しはたっぷりとしてくれる」
サイモンは、冷たく笑った。
「待ってくだされ。それは何かの間違いでござる。今一度、お調べくだされ」
サイモンは無言で、別のロボットに主水を引き渡した。
「こやつを例のところへ」
主水は、機械城の地下にあるロボ獄につれていかれる。
ロボット専用の獄舎である。
暗い。照明がない。太陽の光りも差し込んでこない。
機械油のすえた匂いがした。
加えて、何かが腐敗しているようだ。
獄の中には数体のロボットがすでに入っている。
「ここで待っておれ、いずれご沙汰がある」
ロボットは言い置いた。
獄の中は、不法を働いたロボットで一杯だった。
ここに連れ込まれる折、手荒なことをされたらしく、各々のボディはかなり痛んでいる。手足のもぎ取られているロボットも何体かある。
「お前さん、どんな悪事を働いたのかね」
ドアが閉まると一人のロボットが擦り寄って話しかけてきた。
「失礼ながら、貴公は」
「貴公ときたか、お前さん、服装を剥ぎ取られているからわからないが、お侍さんかい」
「さようじゃ」
「へっへっへっ、よけいにかわいそうにね」
言葉の裏には何かを隠しているようだ。
「待て、その笑いはどういう意味だ」
「知らないのかね。かわいそうにね」
はっきりとは答えぬ。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://9vae.com http://visitjapan.info
youtube manga_training