■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(1)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
■第七章 血闘場
(1)
「だんな大丈夫ですかい」
なつかしい声が主水の耳元に響いた
びゅんびゅんの鉄が急に現れていた。
「ありゃ、殿様もおられる。これりゃ、殿様誘拐されたんじゃなかったんですかい」
「今、解放されたのじゃ」
「じゃ、あっしは、今から殿様を介抱しますってね」
笑いをとろうとした鉄だったが、まわりの白い目に気付く。そういう雰囲気ではない。「おまえ、どうやってここへ」
「へへぇ、だんな、上空をご覧なさいよ」
飛行船が、主水の視界を占めていた。地下空洞の天上部が抜けて、空が見える。
「おおっ、心強い」
徳川公国空軍「飛天」及び「高千穂」号が降下してきていた。
「この殿様がね、心配して後からこれで追えっておっしゃったんで。おまけにロボット旗本組も乗せてきやしたぜ。いやっ、殿様って先見の明がおありだ。が、敵に誘拐されちまってのがどうもね」
「もう、鉄さんたら、いいかげんにしなさい。ああっ、主水、大丈夫なの」
マリアも続いて降りてきた。主水の腕の中に飛び込んで来る。
大きな空洞がこの地下古代都市のうえにうがかれていた。
「おお、あんな大きな穴がいつできたのじゃ」 主水が抱き着くマリアに尋ねた。
「私達の方もびっくりしたわよ。急に近畿新平野の中心が陥没するのですもの」
「この飛行船のレーダーが、とらえやしてね。早速に駆け付けてきたってわけでさあ」
「ところで、ロセンデールはどこなのですか」 マリアが尋ねた。彼女の緑の瞳は復讐に燃えていた。
「先刻、逃げ出しおったのじゃ」
そういう二人の前に、上空に、神聖ゲルマン帝国のバイオコプターが現れている。背後には聖騎士団が続々と現れていた。
「主水、逃げた訳ではありませんよ。古代都市が現れるのを待っていたのですよ」
バイオコプターから、ロセンデールの顔が見えた。
「ロセンデール、ひきょうだぞ。一対一の勝負だ。降りて来い」
「ふふん、日本のロボット風情に卑怯物と呼ばれるのも豪気ですね。その挑戦にのりましょう」
「よろしいですか。他の方は手出ししないでください」
ロセンデールは同じバイオコプターにいるクルトフらに告げる。
「しかし、殿下」
クルトフが難色を示す。
「よろしいのです。私のいうようにしてください」
「もしか、お負けになれば……」
「クルトフ、そんなわけがないでしょう、私が日本のロボットに負けるなんて」
「主水どの、大丈夫ですか」
反乱ロボットの長、山本一貫が心配そうにいう。
「まかされよ、主水一世一代の見せ場でござる」
ロセンデールが、バイオコプターから降りて来た。
が、シュトルフが率いる後続のバイオコプター部隊は攻撃の間をはかっている。
「クルトフ様、念には念を」
シュトルフの声がクルトフに聞こえる。
「シュトルフ君、心強い言葉ですねえ。後詰めは頼みましたよ」
「お任せあれ。クルトフ様」
「主水よ、神殿の中に隠れている剣を取るのだ」
足毛布博士が叫んでいた。足毛布博士の表情が急変していた。
「よいか、主水。お前のICチップは特別に選ばれたロボットにしか使われないチップだ」『そうか、足毛布博士。あやつが、早乙女主水が我々の探している運命の七柱の一人のロボットなのか』
急に心柱が足毛布博士に言葉を投げていた。「そうです。みはしら様。あの主水が古来から伝わる伝説の石を、心に使ったロボットの一人なのです」
足毛布博士が丁寧に答えた。
『そうならば、私めも手助けせねばなるまい』心柱が言葉を続けた。
神殿の床の真ん中から、棒のようなものが突出する。
「おおっ、あれは一体」
人々が驚く。
「クサナギの剣じゃ。あれを持つ者は、この国の歴史を変革できると言われておる」
落合レイモンが唸った。
「心柱があれを出現させよったか」
レイモンはしきりに感心している。
「クサナギの剣をつかうのは、ロボットでも構わぬのでございますか」
徳川公が、落合レイモンに心配そうに尋ねる。
「ロボット、人間の区別はない」
「主水、どうじゃ。あれを抜いて、ロセンデールと戦え」
徳川公廣が言う。
「が、お上、もし拙者に抜けますでしょうか」「あの剣が出現せしこと、まさに、お主が選ばれし者という証拠よ」
祭壇の剣を主水は触ろうとした。逆に剣の方から近づく感じがした。
「これは一体…」
主水はその感覚に驚いてしまった。ひょっとして私のICチップには、秘密が。あの運命の七つの星とかいう、意味不明の言葉が何を意味しているのか。剣にもう一度触ることが恐かった。
「さあ、もう一度、早く、刀を引き抜いてみよ、主水」
足毛布博士が呼びかけていた。
『俺からの心からの贈り物を、主水恐れることはない。そちが、『運命の七柱』の一人ならばな…』
ゆっくりと主水はクサナギの剣に触る。手が剣に巻き込まれた。そんな気がした。剣と主水の手が一体化していた。
ずぶりと、剣は祭壇から抜かれる。その瞬間、剣からまばゆい光が射した。
「おう…」
ため息ともつかぬ声が見守る人々から漏れた。
主水はクサナギの剣を高々と持ち上げた。主水の胸の真ん中がキラリと光った。
「早乙女主水、このクサナギの剣にて戦いもうす」
同じ時、知恵の胸にも同じようにキラリと光った。
「こ、これは…」
知恵は回りを見渡す。誰も気付いていないようだ。
「俺も運命の七柱の一人なのか…」
「いや、旦那の晴すがた、かっこいいねえ、ねえさん」
が、鉄がみたマリアの眼は異常になっている。マリアは黙ったままだった。鉄は何かそら恐ろしいものを見た気になって、目をそらした。このマリアの様子には、誰も気付いてはいない。
(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(1)
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■第七章 血闘場
(1)
「だんな大丈夫ですかい」
なつかしい声が主水の耳元に響いた
びゅんびゅんの鉄が急に現れていた。
「ありゃ、殿様もおられる。これりゃ、殿様誘拐されたんじゃなかったんですかい」
「今、解放されたのじゃ」
「じゃ、あっしは、今から殿様を介抱しますってね」
笑いをとろうとした鉄だったが、まわりの白い目に気付く。そういう雰囲気ではない。「おまえ、どうやってここへ」
「へへぇ、だんな、上空をご覧なさいよ」
飛行船が、主水の視界を占めていた。地下空洞の天上部が抜けて、空が見える。
「おおっ、心強い」
徳川公国空軍「飛天」及び「高千穂」号が降下してきていた。
「この殿様がね、心配して後からこれで追えっておっしゃったんで。おまけにロボット旗本組も乗せてきやしたぜ。いやっ、殿様って先見の明がおありだ。が、敵に誘拐されちまってのがどうもね」
「もう、鉄さんたら、いいかげんにしなさい。ああっ、主水、大丈夫なの」
マリアも続いて降りてきた。主水の腕の中に飛び込んで来る。
大きな空洞がこの地下古代都市のうえにうがかれていた。
「おお、あんな大きな穴がいつできたのじゃ」 主水が抱き着くマリアに尋ねた。
「私達の方もびっくりしたわよ。急に近畿新平野の中心が陥没するのですもの」
「この飛行船のレーダーが、とらえやしてね。早速に駆け付けてきたってわけでさあ」
「ところで、ロセンデールはどこなのですか」 マリアが尋ねた。彼女の緑の瞳は復讐に燃えていた。
「先刻、逃げ出しおったのじゃ」
そういう二人の前に、上空に、神聖ゲルマン帝国のバイオコプターが現れている。背後には聖騎士団が続々と現れていた。
「主水、逃げた訳ではありませんよ。古代都市が現れるのを待っていたのですよ」
バイオコプターから、ロセンデールの顔が見えた。
「ロセンデール、ひきょうだぞ。一対一の勝負だ。降りて来い」
「ふふん、日本のロボット風情に卑怯物と呼ばれるのも豪気ですね。その挑戦にのりましょう」
「よろしいですか。他の方は手出ししないでください」
ロセンデールは同じバイオコプターにいるクルトフらに告げる。
「しかし、殿下」
クルトフが難色を示す。
「よろしいのです。私のいうようにしてください」
「もしか、お負けになれば……」
「クルトフ、そんなわけがないでしょう、私が日本のロボットに負けるなんて」
「主水どの、大丈夫ですか」
反乱ロボットの長、山本一貫が心配そうにいう。
「まかされよ、主水一世一代の見せ場でござる」
ロセンデールが、バイオコプターから降りて来た。
が、シュトルフが率いる後続のバイオコプター部隊は攻撃の間をはかっている。
「クルトフ様、念には念を」
シュトルフの声がクルトフに聞こえる。
「シュトルフ君、心強い言葉ですねえ。後詰めは頼みましたよ」
「お任せあれ。クルトフ様」
「主水よ、神殿の中に隠れている剣を取るのだ」
足毛布博士が叫んでいた。足毛布博士の表情が急変していた。
「よいか、主水。お前のICチップは特別に選ばれたロボットにしか使われないチップだ」『そうか、足毛布博士。あやつが、早乙女主水が我々の探している運命の七柱の一人のロボットなのか』
急に心柱が足毛布博士に言葉を投げていた。「そうです。みはしら様。あの主水が古来から伝わる伝説の石を、心に使ったロボットの一人なのです」
足毛布博士が丁寧に答えた。
『そうならば、私めも手助けせねばなるまい』心柱が言葉を続けた。
神殿の床の真ん中から、棒のようなものが突出する。
「おおっ、あれは一体」
人々が驚く。
「クサナギの剣じゃ。あれを持つ者は、この国の歴史を変革できると言われておる」
落合レイモンが唸った。
「心柱があれを出現させよったか」
レイモンはしきりに感心している。
「クサナギの剣をつかうのは、ロボットでも構わぬのでございますか」
徳川公が、落合レイモンに心配そうに尋ねる。
「ロボット、人間の区別はない」
「主水、どうじゃ。あれを抜いて、ロセンデールと戦え」
徳川公廣が言う。
「が、お上、もし拙者に抜けますでしょうか」「あの剣が出現せしこと、まさに、お主が選ばれし者という証拠よ」
祭壇の剣を主水は触ろうとした。逆に剣の方から近づく感じがした。
「これは一体…」
主水はその感覚に驚いてしまった。ひょっとして私のICチップには、秘密が。あの運命の七つの星とかいう、意味不明の言葉が何を意味しているのか。剣にもう一度触ることが恐かった。
「さあ、もう一度、早く、刀を引き抜いてみよ、主水」
足毛布博士が呼びかけていた。
『俺からの心からの贈り物を、主水恐れることはない。そちが、『運命の七柱』の一人ならばな…』
ゆっくりと主水はクサナギの剣に触る。手が剣に巻き込まれた。そんな気がした。剣と主水の手が一体化していた。
ずぶりと、剣は祭壇から抜かれる。その瞬間、剣からまばゆい光が射した。
「おう…」
ため息ともつかぬ声が見守る人々から漏れた。
主水はクサナギの剣を高々と持ち上げた。主水の胸の真ん中がキラリと光った。
「早乙女主水、このクサナギの剣にて戦いもうす」
同じ時、知恵の胸にも同じようにキラリと光った。
「こ、これは…」
知恵は回りを見渡す。誰も気付いていないようだ。
「俺も運命の七柱の一人なのか…」
「いや、旦那の晴すがた、かっこいいねえ、ねえさん」
が、鉄がみたマリアの眼は異常になっている。マリアは黙ったままだった。鉄は何かそら恐ろしいものを見た気になって、目をそらした。このマリアの様子には、誰も気付いてはいない。
(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(1)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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