ロボサムライ駆ける■第30回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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第四章 剣闘士 (4)
主水が、ぼんやり地上リクライニングゾーンで休んでいると、あるものが目に飛び込んできた。
土煙が上がっている。一体あれは……。
八足歩行タイプロボットのクラルテが疾駆してくる。
乗り手はいない。
それが途方もないスピードで走っている。
文字どうり爆走であった。
「危ないぞう」
「みんな、逃げろう」
人々は口々に叫んでいた。
主水の目は何かに気付く。
進行方向に逃げ遅れた人間の子供がいる。
体を強張らせている。
その子の姿に主水は気付く。その子は道の真ん中で立ちすくんでいる。
「あれは…」
高い階級に属しているらしく金のかかった服装をしている。
日よけ傘がそばに落ちている。それを持っていた子供のお供のものどもは、我先に逃げてしまっている。
「ううん、何て奴らじゃ。主人をほおって逃げてしまうとは」
主水は助けようと決意する。
助けるには作業ロボットのリクライニングゾーンと通常世界の結界である電磁ビームの中を突き切らねばなかぬ。
主水の疑似皮膚がバチバチと音を立てていた。
いままで経験したことのない痛みの感覚が、主水を襲った。
「待て、こやつ逃げるでない」
逃げると勘違いし、見張りをしている警備ロボットが飛んで来る。主水はそのロボットを殴る。
「むぐう、何のこれしき」
主水は意識を失いながら、電磁バリアを突き切っていた。
痛みより、その子供を救おうとする意志のほうが強かったのだ。
主水は子供のほうに走り出していた。
背後から警備ロボットのレイガンの光条が追いかけて来る。
目の前に子供が見えた。
主水の体が飛び出す。
眼前にクラルテの足が見えていた。
主水は「クラルテ」の走る一瞬前に、体を投げ出し子供をかかえ横に転がる。
クラルテは主水はの上を走り抜ける。
地響きがした。クラルテの八足のうち二足が主水の体の上を走り抜ける。
瞬間、火花が散る。
「くくう」
数トンの重みが一瞬主水の上を通り過ぎたのだ。さすがの主水もこれは効いた。
「指圧よりすごいのう」
負けず嫌いの性格である。子供は気をうしなっている。
クラルテは主水を一度はねた後、急に止まっていた。
後ろを振り返る。
再び主水はと子供の方に探査アイを向けた。
何かと間違えたのだろう。
すでに狂っているクラルテの電子頭脳は、主水を敵と勘違いしたようだ。
「わしはロボットじゃ、気付かぬか、このクラルテめ」
が、クラルテはそんな主水の言葉を無視して、反動をつけて主水の方へまっすぐ向かってくる。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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