クリス・リックマンという名の箱船第11回
(1976年)「もり」発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■そうだ。最初の賞金かせぎに襲われた時、彼女はイーダは自分の力で貧金かせぎが投げた手榴弾から身を守った。
私の眼はもうさえさっていた。
あの隊商はメルダ市のものではない。一体この町の奴らは何者なのだ。少なくとも私の
クローン人間の子孫ではあるまい。
彼らはイーダという駒を使って、センターの場所を探り出そうとしているのではないか。
私は自らの超能力のうち、聴覚の能力を数倍にしてみた。
この建物のどこかに会議室があるらしい。多数の人々の話し声が聞えてくる。
私は部屋の天井に上り、換気孔をはずし、換気ダクトを、多勢の声のする方へと這って
行った。
天井を数分腰を落として動き廻った後、大きな会議室をみつけだした。
私は換気孔から秘かにのそいた。
そこに出席している人々を見て、驚かざるを得なかっ た。
部屋の円卓を囲んでいる人間達は、死んだはずの人間だ。亡霊達だ。
「それでは、無事に、このメルダ市ヘ、シティ・ディザスターは辿り着いたわけですな」
こう言ったのはミューダ市のハル市長だった。
「作戦はうまく行った」
「これで我々もセンターの場所をつきとめられるだろう」
「間違いなく全都市管理センターを発見できるでしょう」
なんという事だ。
私が今まで消滅させたはずの市長達が、一堂に会していた。
原爆で吹き飛ばしたグル而の市長、メルダート市長、ギルス市長……
なぜなんだ。私は私自身の眼を疑った。さらに追い討ちがかかった。
「それで、イーダ、シティ・ディザスターの杖はとりあげたのかね」
「そうです。あの万能の杖を取り上げました」
そうだ。円卓の一人にイーダがいた。
私は裏切られたのだ。
総べてはシナリオが書かれていて、私はシナリオ通りに動いただけだ。
二台の、賞金かせぎのアンドロイド達の装甲車が侍ち伏せていたのも、
イーダが何らかの方法で位置を知らせていたからだ。
彼らは罠であり、消耗品だったのだ。私の杖をとりあげる絶好の機会を彼女イーダに与えたのだ。
まんまと、私は敵の本拠、大いなる罠、メルダ市へ連れてこられたのだ。
ここが本当の彼ら『都市連合』の本部なのだろう。
■私は換気ダクトを戻り、私の寝室へ戻った。
考えろ。反撃の方法だ。
どんな手を打つべきかか。
とにかく私はセンターと何としても連絡をとり、辿り着かなければなるまい。
まず杖だ。
その夜は、怒のため一唾もできないない。
■次の日、イーダが私の部屋を訪れてきた。
「指導者があなたとお話ししたい事があるといっています。どうぞ私についてきて下さい」
私は銃を隠していた。若い男がおとした古代の小型拳銃だ。ないよりもましという代物
だが。
私は建物の回廊をイーダの後について進んでいた。
私はイーダ。の背中に銃を押し着けた。
「何をなさるんですか」イーダはびっくりしている。 ‐・
「杖はどこにあるんだね」
「何の事です。あの時に杖はなくなつたじゃありませんか」
「いや、違う、君がテレキネス(空間物体移動)で、隠したはずだ」
イーダは認めた。
「でも、残念ながら、その力は私ではありません。指導者の力によるものです」
突然声がした。
『そうだ。私が杖を隠したのだ。すべては私の命令なのだ。彼女には罪
がない。離したまえ』指導者の声だ。
「杖を返してもらおう。さもなくば、イーダを投す】
しばらく沈黙があった。
『しかたがない。君の杖は返却しよう』
私の目の前に杖が出現した。私は杖を握りイーダからを手を離した。
クリス・リックマンという名の箱船第11回
(1976年)「もり」発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/