ザ・ゲーム(1979年作品)第6回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
「ブラボー、ブラボー」小さなガキが手を叩
いていやがした
パくそっこのガキは一体。
が
俺の胃は驚きのあま力飛び出しそうになった。
そのガキの顔は南条のオヤジから預かった写
真とうり二つだった。こいつが南条則夫なの
だ。
「君、則夫くんだね」
俺は急に丁寧な言葉使
いになった。なにせ依頼主さまのお孫さん。
「そうだよ。西君。しかし、今日の得物はイキ
がよかったなあ、うれしいよ」
俺の表情はこわばった。得物だってこの俺
がか。何を言っていやがるんだ。
「ところで、誘拐犯はもういないのかね。そ
れにこいつらはどこの軍隊だ」俺はあたりを
注意しながら言った。
「軍隊だって、はっはっはっ」
このこましゃく
れたガキは笑い始めた。。人の苦労を何だと思
っていやがるんだ。
「それに。今日の得物とは何の事だ」
「西君。君が得物なのさ。とびきり上物のね」俺を
指さしている。ガキの眼は異様に輝いている。
「どういう事だ」俺はいささか腹を立ててい
た。
「人間標的というわけさ。戦争ゲームには相
手が必要だろう」
「戦争ゲームだと」
「知らないのかい。ボードゲーム、アバロンヒルやSPIの
戦争ゲーム、シュミレーション=ゲームを。
今、ブームなんだぜ。僕はそれを立体的に、
よりリアルに、そして実戦化したわけさ」
「このガキは」俺はこのガキに銃をつきつけ
ていた。
「おっと、僕に手を出すのはやめた方がいい
七の前に俺のゲンコはガキの頭を目がけ飛ん
でいた。一瞬、ガキの姿は消え、俺は空ぶり
をし、バランスをくずした。
「くそっ、俺の眼がどうかしたのか」
ガキの姿は再び同じ位置にある。
「いや、君の目の錯覚ではない。僕はテレポ
Iドしたんだ」
「テレポートだと」
「何にも知らない男だね。君は」俺はこの言
葉をどこか・で聞いた事があった。
「テレポートとは空間瞬時移動のことさ。つ
いでに聞くが、エスパーつて知ってるかね」
「エスパー?」
ガキはこまったような顔をして言った。
「超能力者の事さ」
「というと、お前がそれだというわけか」
「そうだ。僕はこの島久我島をオジジからもらって
遊んでいるんだ。戦争ごっこをやるためにね。
このゲームのための得物は、あの女が探してくれ、毎週一回オジ
ジが運んでくれる。
対戦相手の事さ。
僕のこの拝所の地下のデータ=ルー
ムに、この島じゅうに配置されているVTR
ぞ通してヽすべてのシーンを見る事ができる
わけさ」
「あの女とは南条洋子の事か」
「そう、あの女とは一つ約束があるんでね」
「それに、俺の前に何人もこの久賀島へ」
「そう何人も一億円のエサにつられ、やって
きたさ。でもこの拝所まで辿
りついたのは君が始めてさ。君の能力には脱
帽するよ」
那覇であったベトナム戦争時の米軍の戦友、ビリーはこの島のうわさを聞いた事があっ
たのだろう。だから俺を止めたのだ。
「俺はお前のゲームのなめに何人も人を殺し
たわけか」
「君は誰も殺しちゃいないよ」
「何」
「見てごらん」
俺は背後を振り返った。ガキが指をならし
た。一勢に死体が立ちあがった。ある者は片
腕がちぎれ、ある者は首が吹き飛んでいる。
が立ち上がってこちらへ歩き始めている。
ゾンビか!
俺は思った。
ザ・ゲーム(1979年作品)第6回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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