DJタクシー

2009年07月03日 07時11分27秒 | コメディのかけら

外苑前でひろった個人タクシーは、
運転手の風貌からして変わっていた。

白髪まじりの長い髪を後ろで結んでいた。

乗った瞬間、
車内には大音量でロックが流れていた。

見ると、
運転席の前には何やらいろいろな装置が並ぶ。
なんだ、あれは?
メーターの前に設置されているのは、
どう見てもディスクマンだ。
しかも二つ。
カーステレオではなく、
通常のディスクマンをそこに設置し、
後方のスピーカーと繋いでいるようだ。

行き先を告げると、
運転手はディスクマンを操作した。

音楽が消える。

だが、しばらくすると、
沈黙の中にかすかな金属音が響いていることに気づいた。

なんの音だ?

ミラーの傍に吊るされた、
風鈴の音だった。

釣鐘式ではなく、
金属の棒が何本か吊るされた形式の風鈴。
それが車の振動で揺れ、
かすかな金属音を奏でつづけている。

なんであんなものを吊るすのか?

ヒーリング効果のつもりなのか?

風鈴の音に耳が慣れてきた頃、
運転手が再びディスクマンを操作する。

音楽が流れ始める。

アンビエント風のイントロから始まって、
ギターのフレーズが続く、
インストの曲だ。

まるで風鈴の音にあわせたような選曲。

あの一連の流れは、
ねらってやっているのか。

それにしても不思議なタクシーだった。