先日行ったパリのモパルナスで公衆トイレに入った。
街角にある、個室タイプの公衆トイレである。
外に開閉ボタンと使用中を知らせるランプがあり、
僕が行った時はちょうど使用中だった。
10分ほど待たされて、ようやく先客が出てきた。
入れ替わりで中に入り、
ドアを閉めるボタンを押すが、なかなか閉まらない。
室内にアナウンスが流れ始めた。
だが、フランス語なので何を言っているのかまったくわからない。
しばらくボタンを押し続け。ようやくドアがしまった。
ホッとして壁から飛び出た便器に向かうと、
なんと先客の出した物が残ったままである。
しかし、尿意は限界に来ていたので、
後で一緒に流せばいいやと思い、小便を始めた。
すると突然、便器が動き出した。
便器が立ち上がるように持ちあがり、
壁のくぼみの中に収納されたのだ。
なんとか途中で小便を止めることができたが、
まさか便器が動くなんて。
壁の中から便器を洗う水の音が聞こえてきた。
そうか、ああやって定期的に洗浄しているのか。
そう感心した次の瞬間、背後から水の音が聞こえてきた。
なんと入口のドアと床の隙間から、
猛烈な勢いで水が噴き出してきた。
床一面を覆うほどのかなりの量の水だ。
突然の出来事に戸惑う中、靴はビショビショ。
しかも水は1回では終わらず、2回3回と出てくる。
トイレの中に段差はなく、逃げ場はない。
慌てて、ドアのボタンを押す。
だが、なかなかドアは開かない。
ようやくドアが開いたのは、3回目の水が流れ切った時だった。
後から思えば、
入った時に流れていたのは、
これからトイレ内を洗浄するという注意のアナウンスだったのだろう。
僕はそれを無視して、強引に入ってしまったのだ。
パリの公衆トイレがそんなシステムになっているとは、
僕が持参したガイドブックには書いてなかった。
おかげで、とんだ旅行コメディの1シーンを演じる羽目になってしまった。