交換ストーカー事件、すなわち、互いに面識の無い者が、互いの恨みの相手にいやがらせをしていたという事件が、ワイドショーを賑わしている。
「復讐掲示板」という闇サイトが情報交換の中立ちをしているので、
ワイドショーのコメンテイターは、ネット社会もここまでいったかというあきれ顔。
でも、諸星大二郎のファンなら、彼の作品「復讐クラブ」そのままではないかと納得してしまう。
この作品が発表されたのは1979年だから、ネット社会とは無縁。
”復讐クラブ”はあちこちに支部のオフィスがある会員制のサービス企業。
サービスの内容は上と同じ。
会員は、自分の復讐依頼ができる代りに、見ず知らずの会員の復讐義務を背負う。
恨みの相手が増えたら復讐依頼人数を増やすことができるが、
その代り復讐義務も増えるという仕組み。
会員は、恨み・憎しみは溜めずに発散した方がいいと納得している。
作品では、警察沙汰にはならず、ブラックユーモア的なオチで締めくくられている。
読後感として、これってありうる、現実にあってもおかしくないと思った。
そう思う自分に、等しく人間の心の闇があるからだ。
だから、今度の事件に接しても驚かず、納得してしまった。
もちろん、事件の依頼者・実行者がいたって善良な市民であることにも。
作家の創造力が現実よりはるかに先行していたということだ。
「復讐クラブ」は『不安の立像』(集英社)に所収されている。