京アニの放火事件は、格別アニメファンでない私にとってもショックだ(今現在も)。
加害者への怒りと被害者への哀悼の念は人後に落ちないつもりだが、
どうしても防災(防火)の観点から、建物への疑問が払いきれない。
→追加:京都消防局によれば、合格どころか表彰対象(平成26年)だったというが(7/22のネット記事)、以下に記すようにどうも形式的な評価である気がする。
被害者側である会社にむち打つようだが、 このような悲劇を繰り返さないためにも、
もっと被害が防げたのではないかという、事後的反省を必ず実行するのが防災の役割だ
(実は防犯の観点での疑問もあるが、ここでは防火上の問題に絞る)。
なんといっても解せないのは、3階建ての低層とはいえ、多くの人(70名)が集まる仕事場なのに、
屋外に非常階段の設置がなかったこと。
なんでらせん階段が、通常の階段と別に建物内の中央付近にあるのか。
鉛直に筒状に伸びた空間は、壁のない煙突として火の通り道を形成する
(見た目に便利でかっこいい建築は往々にして防災的には危険)。
一応2つの階段によって「二方向避難」が確保されているということで、
消防法的には条件付きで合格だったらしい。
しかし結局、本来なら人の命を救えるらせん階段が、あらずもがなの配置によって、人の命を奪う役になってしまった。
2階以上には非常出口がないから、そして窓が小さいこともあり(開かなかったともいう)、
階下からの熱と煙に襲われたら、屋上に向わざるをえない。
実際、屋上への階段に人が折り重なっていた。
屋上への出口は通常は施錠されても仕方ないが、この建物においては、いざという時には唯一の非常出口として、容易に(3階から)解錠できるようにすべきであった。
→追加:扉は解錠されていたが、操作が複雑で緊急(システム1)向きではなかったようだ。
避難用の非常扉は、体で押すだけで開くようにすべきで、”内側に開く”造りでも失格なのだ。
幸い床面積が広めなので、屋上が全面的に熱と煙に覆われることはない。
実際、この日は風が強かったので、有毒な煙はどんどん一方向に流れ去っていた。
昔のデパート火災でも、みんな屋上に避難して、はしご車による救出を待った。
アニメ製作所は、ただでさえ燃えやすいものが多いはず(室内に和紙やフローリング設備があったという)。
放火でなくても、不祥事で1階から出火したら、2つの階段はともに熱と煙の通り道になるので、上の階の人たちは逃げられない造りになっている。
非常階段がないなら、せめて2階と3階に避難梯子、いや大人数のオフィスなら救助袋を備えておくべきか
(2階にいた人たちは、外から架けられた梯子で助かったという)。
もちろん各フロアに消火器は置いていたよね
(2015年に新幹線内でガソリンまかれた火災は、運転手が消火器で消した)。
とにかく防火の対応が伺えないという意味で、私には(京都消防局と違って)恐ろしい建物に見えた。