いよいよ12月(師走)となった日曜。
昨晩の高校同窓会の酔いもすっかり醒め、予定通り、神奈川で開催されている「運慶展」を見にいく。
この展示は横須賀美術館と金沢文庫(写真:ポスター。運慶作大威徳明王)との共同開催なので(あと鎌倉国宝館も協力)、その2箇所に行く。
運慶は奈良(大和)出身ながら、鎌倉武士たちの支援を受けて、東国鎌倉周辺の地にも作品を残しており、それらが一堂いや二堂に会するのだ。
まずは三浦半島突端の観音崎に程近い、横須賀美術館。
京急の馬堀海岸駅からバスで向かう。
房総半島の富津岬・東京湾観音を対岸に望む東京湾の要衝・浦賀水道を見渡せる公園にあるので、芝生に寝そべるだけでも来る価値のありそうな所。
しかも併設のレストランも人気。
あと週刊新潮の表紙で有名だった谷内六郎館も併設。
もっとも私は運慶展を”はしご”するので、同時開催の他の特別展には目もくれず、地元に縁のある画家たちの展示を足早に見て、いよいよ「運慶展:運慶と三浦一族の信仰」※の展示室に入る。
※12月22日まで
そこにあるのは市内浄楽寺の運慶仏5体(阿弥陀三尊+不動明王+毘沙門天:いずれも重文)。
実は、この5体は2019年の開帳の時に浄楽寺に見に行った(→記事)。
こちらは美術館なので、説明のパンフとネットアプリ「ポケット学芸員」を使っての解説(運慶展に限って音声案内)が加わる。
この地で活躍した時の運慶は30代だから(東大寺の仁王は50代の作)、大御所というより東国武家の新時代にふさわしい新進気鋭という状態だったようだ(上の大威徳明王像は最晩年の作)。
運慶仏以外に、片膝立てた中国南宋の観音像、和田義盛の身代わりに傷を負ったという平安中期の薬師如来像など横須賀の他の寺からの出品もある。
バスで馬堀海岸まで戻って京急に乗って、金沢文庫で降りる。
ここから東に10分ほど歩いて、県立金沢文庫に達する。
金沢文庫は、元は金沢北条氏が集めた貴重な文書の文庫(学問所)だが、今は県立の博物館になっている。
ちなみにこの地は横浜市金沢区なので相模ではなく武蔵の国。
共同開催の横須賀美術館の半券を見せると団体料金になる(私の場合は年齢割もあってたった100円)。
こちらの運慶展は「女人の作善と鎌倉幕府」というテーマ※。
※:2025年2月2日まで
すなわち北条政子などの女性支援者と関係のある展示。
こちらの運慶仏は小ぶりな念持仏サイズで(上写真の明王もその1つ。もちろん造りに妥協がない)、他は彼が指導した工房作が中心。
その中で個人蔵の展示は貴重。
特に憤怒像における顔面の筋肉の盛り上がりのリアリティは、”存在”のリアリティに直結し、「本当にいるんだ」という気持ちにさせられる。
ところで美術展に行くのはもちろん観たい作品があるからだが、そこで販売されている図録を買うことはほとんどない。
今回も一瞬迷ったが、手を出さなかった。
なぜなら、過去に買った図録は、たった1回読んだだけで、あとは全て本棚の肥やしになっているから。
しかも図録なので分厚い。
古書に出しても歓迎されそうもないし。
とうことで、よほどの事でない限り、手を出さないことにしている(電子書籍版にしてくれるとありがたい)。
館外に出ると向いは庭園のある称名寺。
銀杏の黄葉が盛りで、ここかしこで和服女性の撮影会。
撮影会の隙間を縫って、本堂に参拝。
あとは往路を戻った。