伊東市にある文学会「岩漿」の木内光夫代表より第二期第17号が送られてきた。
平成9年7月16日の第一期創刊号から12年、通巻第17号である。120ページの小雑誌ながら詩、小説、エッセイなどを網羅する本格的な総合文芸誌である。
執筆者は所謂売れっ子の作家や詩人ではないが、作品は明快で分かりやすい。小説はストーリーが面白い。詩や俳句もレベルが高くそれぞれ独特な香がある。
岩越孝治氏の巻頭小説「流れ花」は叙情的な力作である。
連載小説、馬場駿氏(木内光夫の筆名)の「弧住記」(第十回)第二部は著者本人が大学受験資格を取った頃の体験的な小説である。以前の女友達へ連絡しようと彼女の実家へ電話した場面から始まる。長編連載小説ながら一回一回が読み切りのような構成になっていて緊迫した場面が続き飽きさせない作品である。
その他、随筆や詩も多く楽しい。
この同人誌は伊東市を中心にしたローカルな文化の香りがする。地方の文学会の特徴が分かり、面白い。とくに森山俊英の 豆州歴史通信、「二・二六事件と伊豆」はローカルな昭和史として興味深い。
この文学会は結成後、12年、伊豆半島東海岸の地方文化を豊かにして来た。インターネットの普及が日本語を劣化させ、美しい文章にめったに会えなくなった。日本古来の文化を軽薄にしている。この「岩漿」を読んでいると、美しい日本語が健在であることが分かり、嬉しくなる。詩も美しい。ブログを毎日書いて、ネット文化に埋没している自分のあり方に反省を促す本でもある。皆様へもご一読をお勧め致します。
入手方法や内容の詳細は、http://www.gan-sho.book-store.jp/index.html にあります。(終わり)