谷中優の部屋(音楽教育・創作表現・文化・芸術・出版等)

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レコード批評 

2017年06月21日 | 音楽・音楽教育・創作など感想やお知らせ
≪レコード批評≫
「歌曲集 はまなす、茨木のり子の詩による3つの歌」(川本研一/作曲)を聞く
 
 「歌曲集 はまなす」は、石川啄木「浜薔薇」、八木重吉「うつくしいもの」、島崎藤村「吾胸の底のここには」、中原中也「独身者」など11人の詩人の12の小品から成り、「茨木のり子の詩による3つの歌」は「六月」「わたしが一番きれいだったとき」「ぎらりと光るダイヤのような日」で構成されており、3曲による組曲といえよう。
 全体は数曲の長調の他は(数少ないそれらの楽曲においてさえも中間部は短調に転調している)短調をベースに展開していて、曲集自体非常に抒情的で感傷的なものになっている。それは創作上の意図的な部分の存在と同時に、詩のエネルギー(言葉の持つ意味)の誘導によって表現されたものでもあるだろう。ただし幾多の詩の中からあえて15の作品を選び出した作曲者の意思があり、そこに川本の創作へのひたむきさとともに、強烈な情熱を感じるのである。
 また例えば、新体詩・現代詩と表層の異なる作品群でありながら、初期の作品「浜薔薇」から現在に至る「わたしが一番きれいだったとき」などに一貫して見られる「川本カラー」で染め上げている実態は、これ以後の方向性をも示唆しているだろう。
 演奏はソプラノの立原ちえ子が全曲を通して好演(ピアノ/平島誠也)。イタリア歌曲が専門分野と聞いているが、近年は日本歌曲をよく採り上げている。一般的に日本歌曲は難しいといわれる中、立原は個々の詩の意味と作曲者の意図をよく引き出し表現していた。
 蛇足であるが、以前立原の演奏会批評を手掛けたことがあった。原稿が残っていれば後日ご紹介したいと思う。            (2017.6.21 谷中優)
(CD)「歌曲集 はまなす、茨木のり子の詩による3つの歌」作曲/川本研一
KING RECORDS NKCD-1705



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