産卵シーンの回顧
撮影意欲をそそられるキトンボの産卵、とくに撮りたい放卵の瞬間は産卵方法から大概は草が被ってしまいます。
そもそも個体数が多くないと産卵を撮影すること自体が困難ですが、ここ2年、例年のポイントで急減しました。
今後の動向が気懸かりです。そこで、草が被っているために掲載しなかった写真を改めて見直してみました。
また、露出設定に失敗して放置していたものも、補正して掲載しています(一部再掲載あり)。
まずは、草への放卵時に水滴とともに卵を飛ばすか、直接付着させるか、以前からの疑問点の解明を試みました。
結果、草叢に突入する個体の大半は後者の動きをするようですが、区別は微妙で写真では検証できませんでした。
♀が腹部を前に振って岸辺の草に放卵する産卵行動
背面から 腹端を草に接触させて放卵したと推定
0.2秒後 飛び上がって草叢から出てきたところ
産卵弁に蓄えた卵塊を振る連結態 手前は単独産卵の♀
開けた場所で、岸辺を目がけて放卵態勢になった連結態
正面から 放卵前に正面向きになり、産卵弁に蓄えた卵塊が目立つ この後、土手の土に放卵した
草叢のなかの土に卵を付着させる連結態
当所で見る一般的な産卵パターンは概ね以下のとおりです。
①産卵場所に飛来した連結態が岸辺近くで打水する ②ホバリングしながら腹端に貯めた水滴に卵を排出する
③腹部を前方に振って岸辺に接近し、土か植物を目がけて卵を含んだ水滴を打ち付ける ④放卵後のホバリング
放卵後は直ちに打水して、他の干渉を受けない限りは移動することなく、この行動を繰り返します。
①打水
②打水後のホバリング 産卵場所を見定める 手前は干渉する♂
③草のなかに潜り込んで卵を打ちつける ②から2秒後
④放卵直後 後退してホバリング 次の打水をする直前で放卵から打水までは0.4秒
打水の様子 上の写真とは連続していない
放卵前の様子 左は打水後のホバリング 右は打水直前の連結態
右の連結態が打水した直後
産卵パターンは一様でなく、時に打水して放卵することがありますが、連続的ではありません。
岸辺に向けて放卵態勢になった連結態
そのまま前進したが、草叢の手前の水面に放卵した
2022.10.14 長野県
一連の産卵行動のなかで、放卵の前に再度打水するという紛らわしい行動をした連結態です。
腹部を振った時に偶発的に接水したようです。動きが激しく目視できなくても、写真では様々な発見があります。
打水後、ホバリングして腹端の水滴に生殖口から卵を排出している場面
打水から1秒後に再度打水
上から0.5秒後 飛び上がったところ 打水時に放卵していないことが分かる この後、岸沿いに移動した
放卵後次の打水に向けてホバリングする個体の腹端 水滴が付いていない状態
2024.10.17 長野県
連続打水産卵、連続打泥産卵については、当所では一度のみですが、後者の産卵を目撃しています。
左は草叢のなかの泥土に産卵する連結態 右は通常パターンの産卵
連続打泥産卵
2022.10.14 長野県
参考までに、別の生息地の殆ど水がない泥田で連続打泥産卵する様子です(2019年10月に掲載済み)。
連続打泥産卵
2019.10.6 群馬県
<10.17>
期待外れ
キトンボの撮影に例年行っている長野の池、昨年は連結産卵を殆ど目撃しておらず、不安ながら行ってきました。
池端は草に覆われ、そのなかに入って産卵するので撮れそうもない状態。草を退けても、そこには飛来しません。
個体数は昨年よりは多かったものの、以前とは雲泥の差です。苦労して撮りましたが、期待外れに終わりました。
産卵のピークは11時前の5分間で、11時半でほぼ終了。日によるとはいえ、拍子抜けです。気温24℃。
10時50分頃 漸く最初の連結産卵を目撃 草の間に入って産卵するので上からしか撮れない
放卵時は必ず草に潜り込んでしまう
11時前に一斉に現われ、最大3対が同時に飛来したが、一瞬で分散
打水して腹端に水滴をためて卵を飛ばすか草に貼り付ける行動を繰り返す
打水
打水後、放卵場所を見定めてホバリング
打水して連結を解除した♀と警護する♂(右)
連結解除直後の♂
時間の経過とともに単独産卵が目立つようになった 打水後のホバリング
打水
午前の交尾態 相当敏感
午後の交尾態 連結産卵がほぼ終わった頃、単独産卵する♀が捕捉された
到着時からオオルリボシヤンマ3♂が池を旋回していましたが、14時まで待っても産卵は目撃しませんでした。
<マダラヤンマ> 静止する♂ 稀に飛来することがあるが目撃してもすぐ飛び去る
<アオイトトンボ> ♂のクリーニング行動 午後の池の主役
2024.10.17 長野県
<10.11>
少なさに閉口
この時季の楽しみはキトンボの産卵撮影です。10時半の到着時は秋晴れの15℃。ただ、風が強いのが心配。
縄張り♂の目撃もなく、気長に待つことにします。ところが、11時半に20℃になってからも産卵の気配なし。
ちらほら現われたのは正午少し前、撮影できたのは12時半前の約2分間で、個体数の少なさに閉口しました。
多分に風の影響と思われますが、猛暑が影響しているのか疑心暗鬼になります。出直すかどうか悩みどころです。
避暑地から戻ってきたアキアカネは多数見られ、風には無関係の様子で、やたら交尾態が目に付きました。
11時15分頃 漸く縄張りの♂が姿を見せる
11時50分頃 連結態で飛来しても風が吹いて産卵せずに静止した
11時55分頃 単独産卵警護の♂ 連結産卵を始めても1分もしないうち連結を解く ♀は繁みのなか
12時20分頃 単独産卵して数10秒で静止した♀
正午を過ぎて、それまでの目撃は5対程度。ハスの下に潜る個体も多く、連結産卵を撮れずに終わる気配でした。
幸い風がおさまった12時25分頃、3対が同時に飛来して、やっと撮影。しかし、2分程ですべて消えました。
キトンボの場合、個体数が多くないと狙ったシーンをとることは困難です。目撃が10対に届かないまま終了。
12時25分頃 狭い範囲で3対が連結産卵 打水して腹端に蓄えた水滴を草叢に打ち付けるスタイル
上の個体を最後に産卵が終了 産卵時間後の♂
午後、日だまりに出てきたオツネントンボ。例年、撮影するオオルリボシヤンマの産卵は目撃しませんでした。
<オツネントンボ> ♂
同 ♀
2023.10.11 長野県
<10.3>
散見
マダラナニワトンボの池ではキトンボが散見され、先行して産卵が始まるのは他の共存地と同じ傾向のようです。
本命が登場すると水際に目がいきませんが、撮影時点では見渡せる範囲での連結産卵の目撃は3対でした。
10時50分頃 縄張りの♂
11時10分頃 交尾態
11時20分頃 連結産卵 同時に3対が飛来
打水 当所では打水して腹端に蓄えた水滴を飛ばす産卵スタイル 連続打水産卵は目撃しない
産卵弁に水を蓄えた状態 この後、岸辺に卵を含んだ水滴を飛ばす
マダラナニワトンボの産卵場所で圧倒的多数を誇るのはアオイトトンボ。時々リスアカネの連結態が飛来します。
<リスアカネ> 連結産卵
産卵休止
2023.10.3 新潟県
<10.14>
再び長野へ
再び長野のキトンボ、10日前は中途半端な出方で出直しです。南関東は雨で道中心配でしたが、現地は快晴。
時期も気温もよく、10時半から11時をピークに連結態が多数活躍して13時過ぎまで産卵。最高気温22℃。
連結産卵
左の連結態は打泥産卵
連結態と干渉する♂
連結態の♀に飛び付く♂
打水
放卵の直前 手前は単独産卵の♀
連結解除の直後
♂は単独産卵する♀を警護
縄張り♂が多いので単独産卵に移行する♀は少なく時間も短い この♀は長く約1分半産卵
産卵後の♀を捕捉した交尾態 敏感で追うのも大変
交尾拒否 産卵後の♀は簡単には交尾に応じない
産卵を終えて上空に飛ばずに池に留まった♀
13時15分頃に産卵終了 池端でぐったりする♀ 接近しても飛ばない
2022.10.14 長野県