燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医徳田安春の最新医学情報集。問診、フィジカル、医療安全、EBM、臨床研究に強くなれます。

ピットフォール 3

2015-04-03 | 症例集

 前回からの続きです

症例2   80歳男性  主訴:呼吸困難

 最近の健診や病院受診歴なし、喫煙歴+、10日前より労作時呼吸困難、5日前より発作性夜間呼吸困難、昨日より起座呼吸、今朝救急外来受診、顔色が悪く冷汗をかいていた、胸痛無し。

 バイタルサイン:血圧110/85、脈140、呼吸数40、体温35.5℃、Spo2 92%(O2mask 7L)、収縮期駆出性雑音3/6 late-peaking ejection murmur、最強点は第2肋間胸骨右縁で右鎖骨に放散あり、S2減弱+、動脈触診で、遅脈+小脈 pulsus tardus etparvus あり、四肢末梢冷たい、冷汗+、前脛骨~足背に浮腫 pitting edema あり、slow edema であった、心電図:左室肥大 LVH strain pattern、胸部X線写真:両側肺野びまん性にうっ血あり。

● ピットフォール

 担当医は、左心不全の診断で、ニトログリセリンの持続静注を開始した。その数分後、血圧が60/45mmHgへ急激に低下した。

● その後の経過と解説

 心臓診察より重度の大動脈弁狭窄症 critical aortic stenosis (critical AS) による左心不全の診断となる。心エコー検査にて、大動脈弁の高度石灰化・解放制限を認め、連続波ドップラーエコーによる A-V pressure gradient の推定では100mmHg であった。critical AS ではニトログリセリンなどの血管拡張薬の投与で「ショック」になることあり、左心不全で肺うっ血をみる場合、フロセマイドなどの利尿剤の使用が安全である。

 浮腫 pitting edema をきたす疾患の鑑別には、pit recovery time の測定が有用である。40秒以内の fast edema であれば、低アルブミン血症(低膠質浸透圧血症)による浮腫であることが多い。一方、本症例のように、slow edema であれば、うっ血性心不全などによる浮腫を考える。

● 最終診断:重度大動脈弁狭窄症による左心不全

 今回は以上です、話変わって、錦織選手残念でした、マイアミ・オープンテニス準々決勝でアメリカのジョン・イスナー選手に4-6,3-6とストレートで敗れました、208センチの長身から繰り出されるサーブは230キロ以上とも言われ、返すので精一杯だったそうです、2年連続の四強ならずでした、次に期待しましょう、頑張れ錦織、では次回に。


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