野菜の種や、苗を調達している佐世保市瀬戸越町の市川種苗店から毎年、暑中見舞いと年賀状が社長宛に届きます。
市川さんは私の母校(佐世保北高)の1年先輩になるのですが、タキイ種苗に勤めた後、先代の後を継いで種苗店を経営しています。
毎年、小さな文字でびっしり書かれた年賀状は含蓄があり、ためになります。今年のテーマはTPPと「米」でした。わが意を得たりの文章だったので紹介します。
新年、時候の挨拶や、今の時期の野菜の手入れのポイントなどが書かれた後の文章です。
●2006年GDPに占める輸出の割合はシンガポール200%、中国・韓国・ドイツが約40%に対し、日本はわずか15%以下です。日本は輸出に頼らないと生きていけない国ではありません。TPPに加盟しないと未来がないという説明は全く的外れです。また加盟国の90%を日米が占めることになり、グローバルな枠組み作りなんて幻想です。単なる日米問題であり、農産物や医療や保険の市場を渡せとアメリカが圧力をかけているだけなのです。TPPを受け入れ、関税を下げ、家電や自動車の輸出で儲けても、年収500万の人が年間2700円!増えるくらいのメリットしかありません。(データは三橋貴明HPより)
普天間と引き替えにTPPで譲歩する必要はないと思います。
●同じ場所で2000年間作れる穀物は「稲」以外ないこと。稲は梅雨が大好き(稲以外のどんな農産物も梅雨が大嫌い)で、日本と相性抜群なこと。田んぼは作付けを中断すると荒れるので、勘定抜きで作り続けた何百年の努力のこと。水田は広大な治水ダムとして国土を守っているのに過去40年間で面積は半減したこと。
金額や効率では計れない米の価値をもっと知って欲しいです。
●政策により農業の効率化が進み、高付加価値の野菜や果実は日本産、穀物はアメリカ産になったと仮定します。平時は仲良く棲み分けができるでしょう。しかし有事に米やトウモロコシは欲しがっても、誰が高価な野菜や果物を欲しがるでしょうか?
国土の事情を考えると貿易とは本質的に不平等なのであり、パートナーシップを謳うTPPは絵に描いた餅でしかありません。
TVや車は無くても生きていけますが、最低限の炭水化物がないと日本人は飢えてしまいます。毎年陛下は自ら田植えをなさり、新嘗祭は宮中で最も大切な行事とされます。種秋穂稔穫税積私和などノギヘンの漢字はすべて「米」に由来します。「米」は単なる生産物としてではなく、神・命・共同体・食・貨幣の象徴としてもっと大切にしてあげなければと強く思います。
「米」を大切にしなければと言う市川さんの考えはまさにその通りだと思います。しかし、米作りの時給は179円ですよ!長崎県の最低賃金646円の3分の1にもなりません。まさに日本の米の生産はボランティアで支えられているようなものです。しかもその大半が65才以上の高齢者です。このままではそのうち「昔、日本には稲作があった」ということになりかねません。TPPはそれを加速させるだけです。
私のうちは田んぼはありませんでしたが、10年ほど前から田んぼを借りて米作りを始めました。まだまだ技術的には素人の域を脱していませんが、米作りは奥が深くて、面白い。2000年にわたって営々と稲作を持続させてきた日本の百姓はえらい!と思っています。そして今を生きる百姓がそれを絶やすわけにはいかない、とも・・・。
採算を考えれば他のことに力を注いだ方がはるかに経営的にはプラスにしれませんが、体力の続く限りは米作りを続けていきたいと思います。