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風の墓碑銘(上・下) 乃南アサ

古い民家の取り壊し現場から発見された3つの白骨死体。その捜査の最中に起こる新たな殺人事件。その殺人事件の捜査のなかで浮かび上がる容疑者の過去に関係した殺人事件。息もつかせぬサスペンスが進行していくと同時にどんどん謎は深まっていく。ストーリーの面白さ、構成のゆるぎなさも一級品だが、それを上回る本書の良さは人物描写の面白さだ。以前読んだ「凍える牙」で活躍した女性とベテランの刑事ペアが登場するが、この主人公2人の相性が悪いという珍しい設定だ。仲が悪いと言っても、「凍える牙」の時にペアを組んだ経験があるせいか、本作では少しずつ心を通わせる努力がみられ、前作よりもさらに複雑な人物描写になっていた。さらに女性刑事の同僚女性との確執等も「そういうことがあるかも」という恐ろしさがあった。ベテラン刑事の方も最後に無事生還、(もうすでに書かれているのかもしれないが)続編が期待されるところである。(「風の墓碑銘(上・下)」乃南アサ、新潮文庫)
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