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すみれ屋敷の罪人 降田天

著者の本は3冊目。廃墟となっていた戦前の旧家のお屋敷から2体の白骨死体が発見された。本書は、この死体が誰のものなのか、この一族に何があったのかを調べて欲しいという内容のメールから始まる。誰が誰に依頼したメールなのかがまずもって最初の謎だ。依頼を受けた人物は、当時のお屋敷について知っていると思われる人物へのインタビューを開始するが、関係者たちが高齢なこともあり記憶が断片的だったり曖昧だったりで、少し真相に近づいたと思うと、それを否定する話が出てきたり新たな謎が浮かび上がったりする。読者を翻弄するのは、関係者がそれぞれの立場でしかものを見ていなかったこと、自分に都合の悪いことは話さないことに加えて、当時が戦時下という特殊な時期だったこと、旧家独特に体面の維持に躍起になる人々ばかりだったりしたことなどだ。最後に明かされる真相は意外すぎるくらい意外なものでその点はすごいのだが、やや着地点が戦時下の特殊性に頼りすぎた感がある気がした。(「すみれ屋敷の罪人」 降田天、宝島社文庫)
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