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喰らう読書術 荒俣宏

著者に関しては、TVで時々みかける「ニコニコしたおじさん」というイメージと、著書を読んで感じるその「博覧強記」振りのギャップが大きすぎて、どうも実像がつかめないという気がしていた。本書を読むことにしたきっかけは、「読書術」について何か参考になることなないかということよりも、著者というのは一体何者なのかという好奇心の方が強かった。読んでみると、まさにその「ニコニコおじさん」と「博覧強記」が融合したような内容で、ユーモアを交えて自分の読書体験を語りつつ、読書というもの、書籍というものについて色々考えるきっかけを与えてくれる1冊だった。著者とは少し世代が違うと思うが、若いころに「松岡正剛」の知的な世界に触れて興奮したことなどはまさに共通の体験で、なんだかとても懐かしくなってしまった。(「喰らう読書術」 荒俣宏、PLUS新書)

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カラマーゾフの妹 高野史緒

少し前に話題になっていたことは知っていたが、読む機会がなく放置していた本書。遠い昔の学生時代に新潮文庫で「カラマーゾフの兄弟」を読んだ記憶はあるが、正直言ってどんな話だったかほとんど覚えていない。話の後半の方で、「審問官」の話があったことは覚えているが、それもどんな内容だったのかさっぱり思い出せない。それでも大丈夫かと少し心配だったが、そのあたりは著者も心得ているようで、内容を覚えていなくても、あるいは読んでいなくても楽しめるようにできているので助かった。巻末の著者自身を含む3名による鼎談をみると、数年前の「カラマーゾフ」の新訳ブームに触発されて書かれたとある。そういえばそういうこともあったなぁと思いだした。読み進めていくと、多分19世紀の話なのに、コンピューターとかロケットとかが出てきたりして驚かされるが、それこそが小説家の想像力の真骨頂なのだろう。ミステリーとしての娯楽性は少ないが印象深い1冊だった。(「カラマーゾフの妹」 高野史緒、講談社文庫)

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