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女たちの避難所 垣谷美雨

東日本大震災被災後の避難までの道のりとやっとたどり着いた避難所、仮設住宅での生活の実態を女性の視点から克明に描いた本書。絆とか連携といった美辞麗句がマスメディアによって強調される中、人々が何に苦しみ何に悩んだのか、その実態は衝撃的だ。特に、真っ先に配布された「仕切り」が「絆」という言葉の一人歩きで全く使われなかった避難所があったこと、義捐金や弔慰金が世帯主に渡された為におきた様々な不都合など、読んでいて胸が締め付けられるような気がした。裏表紙に「憤りで読む手が止まらない」と書かれているが、正しくその通りの内容だった。(「女たちの避難所」 垣谷美雨、新潮文庫)

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ふたえ 白河三兎

修学旅行での出来事を6人の生徒の視点から描いた連作短編集。それぞれの話も良かったが、それ以上に最後の一編である事実が告げられたところでそれぞれの話がより輝きを増すという構成の見事さに驚いた。それぞれの生徒によって語られる担任の先生もすごい。この作家の魅力を改めて感じた一冊だった。(「ふたえ」 白河三兎、祥伝社文庫)

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週末ちょっとディープなベトナム旅 下川裕治

海外旅行のルートを決める際、重視するものは人によってそれぞれ違う。忙しくて旅行日数が限られている人にとってはいくつかの観光地を最速最短のルートで効率よく巡ることが重要になるが、時間はあるが資金に限界がある人にとっては効率よりも安上がりに済むことが重要になる。そもそも旅の目的自体、観光地を自分の目で見ることだったり、珍しい写真を撮ることだったり、その土地の生活をじっくり体験することだったりと、千差万別だ。著者の旅の目的は当然ながら紀行文を書くことなのだが、本書を読むと、とにかく色々な旅の形態や目的のニッチを目指して旅をすることの難しさがひしひしと伝わってくる。時間はたっぷりあり、資金もそこそこ、観光地には興味がなく、写真を撮ったりとか鉄道に乗ったりという特別な目的もない。カンボジアには何度も行ったがアンコールワットには行ったことがない。本書を読んで、そういう自分に合った旅とはどんなものなのだろうかと考えさせられた。本書では、紀行文の部分も面白かったが、各章の間のその土地に関するちょっとした考察が参考になった。2016年にベトナムが30日未満の再入国を規制するようになり、ベトナムとカンボジアを出張する時に、それが出張ルートの制約になった。その時は何故そういう規制が作られたのか分からなかったが、本書を読んで、そういうことかもしれないなぁと考えさせられた。(「週末ちょっとディープなベトナム旅」 下川裕治、朝日文庫)

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展覧会 ラファエル前派の軌跡展

ラファエル前派の代表的な画家ロセッティ、ミレーと彼らの精神的指導者であったというジョン・ラスキンの作品が数多く鑑賞できる展覧会。よくこれだけ集めたなぁと思うほど充実した内容だ。彼らがイギリスの風景画の影響も受けているということで、彼らの前の時代のターナーの作品との比較に力が入れられているのも大きな特徴。

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ノースライト 横山秀夫

著者による久し振りの新作。ある建築家が手がけた渾身の作品であるY邸。書籍に紹介されて彼の代表作となるが、何故かその建物の施主一家は行方不明、建物は放置され、そこにはブルーノ・タウトの作品と思われる椅子がひとつだけ残されていた。主人公はその謎を追いかけて、建築家ブルーノ・タウトの戦後日本での軌跡を巡っていく。謎が少しずつ解明されていく快感、建築家としての過去現在未来に向き合っていく主人公への共感が相まって、何とかハッピーエンドになって欲しいと祈りながら読み進めていく。これこそ読書の醍醐味。「64」の時もそうだったが、何年も待った甲斐があったと思える、一分の隙もない傑作だ。(「ノースライト」 横山秀夫、新潮社)

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能サポ 能町みね子

著者の本はどれも本当に面白い。本書は、カマタマーレ讃岐というJ3チームの観戦記とうどんの食レポをコラボさせた不思議なエッセイだが、香川県民の四大義務(勤労・納税・教育・うどん)、出川作戦(終盤まで観客をやばいよやばいよとハラハラさせる)、うどんがのびる(後半戦で選手が疲れる)、誇・絆・魂の横断幕(つや・こし・だしと読ませる)など独特の表現を連発。言葉に対するハッとさせられる記述も随所に見られる。月並みだが、読んでいるうちに、スポーツでマイナーチームを応援するのもいいなぁ、香川に行っておうどんを食べたいなぁと考えた。(「能サポ」 能町みね子、講談社文庫)

 

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映画 マイブックショップ

戦争未亡人の主人公が、イギリスの小さな海辺の町に亡き夫との夢だった書店を開く。閉鎖的で封建的な風土の残る町で主人公は思わぬ妨害工作に直面し悪戦苦闘する。厳しい自然の風景の美しさが際立つ作品。

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2019年本屋大賞予想

恒例の本屋大賞の予想。昨年まではノミネート作品を全て読んだ上で予測していたが、今年は「ある男」「そして、バトンは渡された」の2冊未読の段階での予想になった。単純に自分がこの本は良いなぁと思ったのは、「ひと」と「ベルリンは晴れているか」の2冊。前者は初めて読む作家の本だったが読後に他の作品も読んでみたいと強く思った作品。後者は、著者の本は2冊目だが、翻訳本を読んでいるような濃密な終戦直後のベルリンの描写が圧倒的だった。それから「ひとつむぎの手」もこれまでの著者の本とは一味違っていて印象的だった。

本命:ひと

対抗:ベルリンは晴れているか

穴:ひとつむぎの手

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