本件は,S市職員であった控訴人が,S市長から①自動車を酒気帯び運転し,進行方向道路脇に駐車していた車両と,反対車線路肩に駐車していた車両の合計2台と接触事故を起こし,②その報告を怠ったとして,平成20年4月30日付けで懲戒免職処分を受けたため,同処分には事実誤認(上記②の事実)があり,また控訴人に認められる情状を踏まえると重きに過ぎるとして,被控訴人に対し,その取消しを求めた事案です。
原審は,控訴人には上記②の報告義務の懈怠が認められるが,その事実をもって控訴人の責任が大きいとまでいうことはできないとしたものの,上記①の非違行為の状況等を踏まえると,上記懲戒免職処分には裁量権の逸脱濫用はないとして,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴しました。
控訴審は,原審判決で示された理由を基本的に肯定し,控訴審でなされた主張についても排斥して,控訴を棄却しました。
妥当な結論だと思います。
この判決を読んで私が思ったのは,同じことを民間企業の社員がした場合,懲戒解雇して有効となるかどうかという問題です。
果たして,民間企業の解雇についても,これと同じ程度の「裁量権」を認めていると言えるでしょうか?
弁護士 藤田 進太郎