本件は,被告TOTO株式会社の工場内で稼働していたHが製造機械に挟まれる事故により死亡したことに関して,
(1) Hの父母である原告A及び原告Bが,Hの属する組の組長であった被告Fには作業員の安全に配慮すべき義務等があるにもかかわらず,これを怠った,又は,被告TOTOが所有する上記工場には瑕疵があったとして,被告Fに対しては民法709条に基づき,被告TOTOに対しては同法715条又は717条に基づき,被告滋賀設備株式会社に対しては同法715条に基づき,損害賠償金及びこれに対する不法行為の日である平成19年5月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,
(2) 原告A,原告B及びHの兄である原告Cが,被告Fには被害者の遺族に対して事故情報を提供すべき義務があるにもかかわらず,これを怠ったとして,被告Fに対しては民法709条に基づき,被告TOTO及び被告滋賀設備にチアしては民法715条にもとづき,損害賠償金及びこれに対する前同様の遅延損害金の連帯支払を求め,
(3) 原告らが,被告TOTOには事故後被害者の遺族に対して誠実に対応すべき義務があるにもかかわらず,これを怠ったとして,被告TOTOに対し民法709条に基づき,損害賠償金及びこれに対する不法行為の日以後である平成19年12月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
た事案です。
本判決は,下請会社の従業員,下請会社の責任のみならず,発注企業と下請会社の従業員との間に実質的な指揮監督関係が存在していたとして,発注企業の使用者責任も認められています。
発注企業は,請負の適正化を行うなどの努力をしていたようですが,まずは,労働者の安全を確保することを第一に考える必要があったということでしょう。