①安全配慮義務違反や不法行為(使用者)責任を理由とした損害賠償請求の概要を教えて下さい。
使用者は,
① 労働者の身体の安全等を確保しつつ働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)
② 従業員が第三者に加えた損害を賠償する責任(使用者責任)
を負っています。
パワハラ をした者とされた者との間だけの問題ではなく,会社も紛争の当事者(被告)となるリスクを負っていることを理解する必要があります。
関連条文は,以下のとおりです。
民法715条1項ただし書きでは,「ただし,使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。」と規定されていますが,裁判実務上,この定めは空文化されており,この定めによる免責の余地はなくなっていますので,あてにすることはできません。
(労働者の安全への配慮)
労契法5条 使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をするものとする。
(債務不履行による損害賠償)
民法415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも,同様とする。
(使用者等の責任)
民法715条 ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も,前項の責任を負う。
3 前2項の規定は,使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。