子供の頃は、足の踏み場もない程どっさりと地表に落ちているその子たちを、
踏まぬように、傷つけまいようにと気をつけて歩いていた。
今も彼らの側を通る際は慎重に歩を進めるが、昔の歩みと今の歩みとでは抱く意味合いが対称的だ。
当時、中学の校舎横の水路沿いには季節が二つ織りなしていた。
すなわち桜花と銀杏。春と秋の風物詩。
中学校時代は、銀杏たちの、乳製品の発酵臭にも似た匂いに、鼻を刺すような嫌悪感を抑えられず拒絶の意思を示していたが、
今は他では感じられない特種さに愛おしささえ覚える。
地表に咲き乱れる山吹色の絨毯。
抑えられないほどの季節の奔流。溢れる芳しさ。
茶碗蒸しに入れて食すも良し♪ 茶封筒に入れて、空のままレンジで軽くチンするのも良し♪
いずれも熱気を溜め込んだ彼らをホフホフしながら食べるのがたまらない。彼らの年に一度の舞台が待ち遠しい。