あんた、見かけない人じゃね
海の人かい、陸の人かい
わしはこのとおり
シケた釣竿が1本きりじゃ
釣れても釣れんでもええ
竿はわしの腕みてえなもんかな
ジャコの機嫌もとらにゃならんし
海の柔らかい手にも触っていたい
とりたてち楽しうもねえ
じゃけんど退屈ゆうわけでもねえ
ここは海と陸との境界
わしはもうどっちにも行けんきのう
ずっと海でいのちき(暮し)してきたけ
体はおおかた魚になっちょる
もう潮っからい風でないと息もでけん
何が釣るるか知ったこっちゃねえ
こないだはカモメが釣れよった
あほカモメはわしを釣ったと思うちょるやろ
竿ごとどこぞへ持っていきよった
あいつは今ごろ
沖でこっそり釣りしよるかもしれん
じゃが釣れるんは魚ばっかりじゃないぞ
錆びたあき缶でん釣れよる
空っぽなのについのぞいてしまう
かび臭い四畳半みてえな
古い家族の匂いがしみついちょる
がらんどうの念仏みたいなやつじゃ
釣りに飽いたらごろんと昼寝んするだけ
一日の半分は眠っちょる
眠れば人生あと戻りもでける
夢ん中のわしは年とらん
いつでん血だらけの海を泳ぎよる
マグロの血もわしの血も見分けはつかん
血だってすすり泣きしよる
夢中になりゃ何してん極楽なんじゃ
近頃はのう
ちょいちょい妙な夢も見よる
岩場に必死でしがみついちょる
まわりは時化(しけ)の海
人も魚もおらん
この世とあの世ん水際はあんなもんかの
死ぬのはええが淋しいのは困るな
日暮れもさみしい
もう空が店じまいしよる
まずめ時いうてのう
釣りには時合なんじゃが
わしは寄ってくる魚は釣らん
いけん、えらいこっちゃ
どでかいことをしでかしたみてえじゃ
もう釣りは続けられん
とうとう海を釣ってしもうた
海の人かい、陸の人かい
わしはこのとおり
シケた釣竿が1本きりじゃ
釣れても釣れんでもええ
竿はわしの腕みてえなもんかな
ジャコの機嫌もとらにゃならんし
海の柔らかい手にも触っていたい
とりたてち楽しうもねえ
じゃけんど退屈ゆうわけでもねえ
ここは海と陸との境界
わしはもうどっちにも行けんきのう
ずっと海でいのちき(暮し)してきたけ
体はおおかた魚になっちょる
もう潮っからい風でないと息もでけん
何が釣るるか知ったこっちゃねえ
こないだはカモメが釣れよった
あほカモメはわしを釣ったと思うちょるやろ
竿ごとどこぞへ持っていきよった
あいつは今ごろ
沖でこっそり釣りしよるかもしれん
じゃが釣れるんは魚ばっかりじゃないぞ
錆びたあき缶でん釣れよる
空っぽなのについのぞいてしまう
かび臭い四畳半みてえな
古い家族の匂いがしみついちょる
がらんどうの念仏みたいなやつじゃ
釣りに飽いたらごろんと昼寝んするだけ
一日の半分は眠っちょる
眠れば人生あと戻りもでける
夢ん中のわしは年とらん
いつでん血だらけの海を泳ぎよる
マグロの血もわしの血も見分けはつかん
血だってすすり泣きしよる
夢中になりゃ何してん極楽なんじゃ
近頃はのう
ちょいちょい妙な夢も見よる
岩場に必死でしがみついちょる
まわりは時化(しけ)の海
人も魚もおらん
この世とあの世ん水際はあんなもんかの
死ぬのはええが淋しいのは困るな
日暮れもさみしい
もう空が店じまいしよる
まずめ時いうてのう
釣りには時合なんじゃが
わしは寄ってくる魚は釣らん
いけん、えらいこっちゃ
どでかいことをしでかしたみてえじゃ
もう釣りは続けられん
とうとう海を釣ってしもうた
朗読してみたい詩、なかなかわたしの中では出会えないのですが、この詩は素晴らしいです。
最後の最後にこういう設定を持ってきたのか、という驚き、それがまた気持ち良くて……
読んでいて声に出してみたい詩、それに出会う喜びをじっくり味わっているところです♪
励みになります。
方言をふんだんに使用したことで、言葉にリズムが生まれたのかもしれませんね。
言葉の流れと響きということは、常に意識していることではあります。