風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

春あはれ、天神さんと鯛焼きと

2016年03月12日 | 「詩集2016」

ウグイスの声がする。
どこからか沈丁花の香りが、甘い風をはこんでくる。地中の虫も這い出してくるという、もやもやと春らしい陽気になってきた。

願はくは花の下にて春死なむ……
せっかちな父は、桜の花を待てずに死んだ。そんな父の祥月命日がきたので、天王寺のお寺にお参りした。
黄砂に交じって、あたりを真田丸の風が漂っている。
いまは戦場のごとく、多くの車が走りすぎる広い国道わきの神社の入口には、真田幸村戦死の地という標柱が建っている。
大坂の陣で戦さの中心場所となった寺の境内は、無名の戦士の死体で埋め尽くされ、その数は3千にも及んだという。墓域には名だたる戦士の墓なども建っているが、いまは大勢の参拝する人でにぎわい、線香の煙が仏像の顔も霞むほどに漂っている。

桜の花に早いなら梅の花かと、一転して地下鉄で天神橋に出る。天満の天神さんの大阪天満宮の散りかかった梅を見る。梅は添え物ていどで、境内は出店ばかりが賑わっている。
お隣りの天満天神繁昌亭の昼席で、うめ~話で笑って過ごすことにする。
大阪弁は、言葉そのものが笑いを含んでいる。ねばっこい語尾やアクセントで、きつい風刺もやわらかな笑いに変わってしまう。繁昌亭大御所の不倫騒ぎも、若手落語家が落語ネタにして笑いをとる。ゲスの極みは気を付けるベッキー、などとオチまで付いた。




体も頭も軽くなったところで、日本一長いという天神橋筋商店街をぶらぶら歩く。
初めてなのでどのくらい長いのかわからない。わからないから興味がわく。商店街といえばシャッター街のイメージが作られている昨今、1丁目から7丁目まで長い商店街が賑わっているというのも、天神さんの有難いおかげなんだろうか。
レトロな店とおしゃれな店が雑居していて、それぞれの店がまだら模様の主張をしているところが面白い。ごちゃごちゃしてるところに、大阪らしい懐かしい古さが残っているともいえる。

日本一はいいが、やはり長すぎる。
4丁目までねばったが挫折してしまった。旨そうな焼きたてのたい焼きを買って、JR天満駅から環状線に乗ったら、すでに夕方のラッシュだった。
おやっさん(親父)、まだまだ大阪の桜はつぼみが固うて咲かしまへんで。




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