この本を方丈社が編集した意図は、若い人にも戦争の勃発が「ある日突然起きた」という筋立てで作り、活字離れの若い人の視覚的に感覚に訴える為に活字を色々に内容によって変えていった、と考えている。
解説を書いた武田砂鉄は、東日本大震災のショックに擬えていた。
戦後生まれの自分に置き換えても、その日の実際のショックの想像力は生まれないが、既に日中戦争をしているというコトからして、つまりは予兆、予測という点で東日本大震災とは異種の位相であったと思うのだが。
ただ、この本を総括すると、一つ残念なことがある。いろんな出典から、12月8日の開戦の日に感じたことを、日記や著作から集めたことは良いが、目次を見ると、吉本隆明17歳から徳富蘇峰78歳まで54名が年齢順に並んでいる。ただ、惜しむらくは、女性の名前が一人も無かったことである。この本の一つの失敗かも知れない。
54人のその日の感じ方を読んでいて、概ね、開戦の驚きと一等国としての誇りとが綯い交ぜとなって思考が停止し、最後は「万歳」という通俗な儀式の言葉で定型化されているモノが多かった印象がある。疑えば、この本の作製意図に或る種の簡易な右傾性を感じるのは眇だろうか。(つづく)
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