生前ご縁のあった
津村喬さん。
私が津村さんの文章を紹介させてほしいと
ご連絡すると
いつも
「どうぞどうぞいつでも使って広めてください」
といってくださったので、
たまに
ご紹介させていただいています。
気功や気養生の参考に
ぜひお読みください。
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いつもいばっている人は腰痛になりやすく、腎臓や肝臓をやられやすかったりします。
いつもすみませんという感じで鎖骨の周囲を緊張させている人は胃を弱くしたり呼吸が浅くなったりゼンソク気味になったりしやすいのです。
心のこだわり、人間関係のこわばりは必ず肉体の緊張に影響を及ぼします。
こうした社会的に押し付けられてきた演技体系だけでなく、繰り返される労働もまたからだのクセになって、その人のヨロイになります。
ショックを受けたこと、叱られたこと、傷ついた体験、肉体的な無理やけが、そういうこともすべてその人「らしさ」を作るもとになります。
私らしさとはこんなものだと、自分で作ってきた身振りの枠に満足してしまえば、それは牢獄になってしまいます。
私にはたくさんのまだできることがあるのに、無限の人生がひろがっているのに、私は自分の収容所を大事にしているのです。
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私らしさとは何なのでしょうか。
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それは冷静に見ればさまざまな緊張体系の集積であって、リラックスしたら春の雪のように融けてしまうものではないのでしょうか。
そんなことはありません。そうした自分のからだと心のクセを知って、それを包み込んで生きて行くあなたの、たえず緊張をほぐしてその奥からいのちの泉をあふれさせて行く日々の努力こそが、本当のあなたの個性なのです。私たちはたくさんのヨロイを着込まないと生きてこれなかったし、自分で見たくもないたくさんの自分をしっているけれども、それでも仮面の奥のいのちの湧き出る泉を知っているし、ヨロイを越える会いの力を知っています。私は自分を収容所に入れておくのは許せないと思える勇気は、そこから出てくるのです。
気功的生活とは、自分のこわばりこだわりに自覚的になって、その牢獄の外に出て行くためのレッスンを続けていくことを指します。
気功というのは実に多様な「身振りのカタログ」なので、私らしくない身振りをしてみたければ、どこからでも選ぶことができます。
動物のまねでもよし、武術のまねもあり、赤ちゃんのまねもあり、なんでもなのです。別に気功をしなくても、私らしくない身振りをとれば、その分だけ私のヨロイはやわらかいものになります。
あしたも元気に会社に行けることが健康だとしたら、それはヨロイの中の健康です。健康のためには会社を辞めるというのは、もう少し深い意味の、ヨロイを脱いでしまうという健康です。ヨロイを着てもこわばらず、ヨロイを脱いでも侵されないというのであれば、それは更にもう少し全体的な健康といえそうです。