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「オーイ、秋の泥落としをやろう」。
見事な黄金色の稲穂を見ながら仲間に声をかける。
大地主の養子に入った同級生。
大企業を定年退職してから、見よう見まねで本格的農作業を始めた。
米作りもその一つ。
農機具操作も慣れてはきたというものの、耕作面積が半端ではない。
日々の苦労が目に見える。
刈り取り・脱穀・精米・出荷など一段落したら彼を囲んで一杯やろう。
少し痩せ気味の彼に、しこたま食って飲んでもらおう。
自慢のノドも苦労話も聞こうじゃないか長年の仲間なのだから。
「エッ泥落としって田植えの後なの?」まあいいか!!
2009.9.29 毎日新聞はがき随筆
男っていう奴は、何をやらかすにもいっぱしげな大義名分をつけたがる。
特に、飲み会などにはなんとかかんとか“冠(カンムリ)”を付けて、どうしても断れない裏付けを欲しがる生き物のようだ。
明治維新を成し遂げた官軍の「錦の御旗」を思い起こすのだろうか。
知ったかぶりをして「泥落としでイッパイ…」などと気取ってみたら、実は大きな勘違いだったとさ……。まあ仲間が集まって楽しく出来りゃそれでいい。
( 写真: 棚田の実り )
見事な黄金色の稲穂を見ながら仲間に声をかける。
大地主の養子に入った同級生。
大企業を定年退職してから、見よう見まねで本格的農作業を始めた。
米作りもその一つ。
農機具操作も慣れてはきたというものの、耕作面積が半端ではない。
日々の苦労が目に見える。
刈り取り・脱穀・精米・出荷など一段落したら彼を囲んで一杯やろう。
少し痩せ気味の彼に、しこたま食って飲んでもらおう。
自慢のノドも苦労話も聞こうじゃないか長年の仲間なのだから。
「エッ泥落としって田植えの後なの?」まあいいか!!
2009.9.29 毎日新聞はがき随筆
男っていう奴は、何をやらかすにもいっぱしげな大義名分をつけたがる。
特に、飲み会などにはなんとかかんとか“冠(カンムリ)”を付けて、どうしても断れない裏付けを欲しがる生き物のようだ。
明治維新を成し遂げた官軍の「錦の御旗」を思い起こすのだろうか。
知ったかぶりをして「泥落としでイッパイ…」などと気取ってみたら、実は大きな勘違いだったとさ……。まあ仲間が集まって楽しく出来りゃそれでいい。
( 写真: 棚田の実り )
このエッセイ、タイトルがいいですね。文中の言葉をとらえるのではなく、文全体で言わんとしていることを4文字で表現しています。さすがです。
褒め言葉、これくらいでよろしいでしょうか?
おめでとうございます。
掲載で、ますますお酒が美味しいですね。
泥落としを知らないことのない作者が知人の労ねぎらおうと友達集めに大トボケ、楽しい宴と友情の輪が見えます。
この言葉は初めて知りました。
で、歳時記を開いてみましたがありません。
むろん広辞苑にもね。
本来は田植えの後…
だから『「秋の」泥落とし』
としている…のでしょう?
そう解釈していいのですよね?
だとしたら、
書き出しと文章末の一文が上手に呼応していると思います。
むろん意図的にですよね。
「彼岸・秋の彼岸」的?、じゃあないかな?
そもそも泥落としって??
「大義名分」
な~~んか情緒を解さない無粋さ、
笑っちゃって下さい。
冗談です。おだてられりゃー木登りを通り越して天まででも登りますよ。
ありがとうございます。
昔は、田植えを終えた農家の、集落を上げた一大イベント。
おばちゃんもおじさんも、呑んだり食ったり遊んだり…の数日間でしたね。
今年は11月になりますが、毎年彼の農作業が一段落した頃に、大義名分をつけてイッパイやっています。