月下樹のおと

樹月けい、オタク母のブログ。アニメ・漫画。お絵かき展示等。義母の介護終わり、義父のご飯お手伝い中。

12/5 サラダボール公演『生きろ、トレープレフ』三女と観劇

2024-12-11 16:14:29 | 感想★アート演劇 映画ドラマ アニメ等

12/5
サラダボール公演
『生きろ、トレープレフ』
初日 三女と観劇

2022年の10月に亡くなった
実家の父のことを思い出した。
中3の三女、観劇後
話し出すうちに ぼろ泣き。
当時、私が彼女に語ったことと
重なったらしい。
夜の空、星を見て父を思う。
学内のイルミネーションもきれいだった。
…………………

原作は チェーホフの『かもめ』

そこに、
演出の西村さんご自身や
亡くなったお父さまとの
エピソードが織りまぜられていた。


正直、私は
『かもめ』のあらすじを忘れていた。
もともと
以前に観たドラマのあらすじも
よく忘れるほうで、
子どもたちに教えてもらうことも
しばしば。
今回もそんな感じで
白紙に近い状態での観劇だった。

……………

湖畔の田舎屋敷が舞台。
芸術家やそれを取り巻く人々の
人生や芸術にまつわる物語。
時を経て移り変わる 
それぞれの人生。

故郷を離れた人が
昔を懐かしむ姿も
ところどころ見られた。

故郷の
何でもない風景や
当たり前にあるものの
良さを語っている。

確かにそうだと思う。

けれど自分は、
人の考え方というか…
同じ価値感に偏りがちなところは
息苦しく感じる。
そんなことを
振り返りながら観ていた。


そして自分は、
いわゆる残った側の人間だ。

学生時代に数年
神戸に出たことはあるが、
その後、故郷に戻った。
結婚も出産も地元。
そして義父母と敷地内同居。

そして三度の出産の後、
心身の不調もあり
数カ月実家に戻っていたこともある。


同じ地域といえど
育った実家といえど
共に暮らす家族でさえも

微妙な違いや変化がある。
生活様式も 価値観も。

自分が変わったからなのか。
周囲とのズレを感じながらも
合わせるべきと努力したが
結局、無理がたたってしまった。

そんな
あれやこれやが頭をよぎりつつ
どちら側にしても
完全なものはあるまいと
しみじみした気持ちでいた。

きっと
観る人それぞれに
色々な思いがよぎるのだろう。

歳を重ねるにつれ
自分のこと、親のこと、
まわりの人々のことなど、
心に触れることが
増えてくるのかもしれない。


そうこう観ているうちに、
舞台上に不穏な空気を感じ始めた。
あ、これ、覚えがある。
昔、この場面を声に出して
本読みしたことがあった。

その時の動揺と
声の詰まり具合がよみがえってきた。

衝撃のラストへの
カウントダウンが始まって、
小さな動悸が徐々に膨らんで。

そして、
この舞台のタイトル
『生きろ、トレープレフ』の
意味が流れ込んできた。


最初に読んだ頃と
年月を経た自分とでは
結末に対する感覚が少し違う。

悲しくもあるが
何だかわかるような気持ち。
どうにもならない
自然な流れというか…
転がる石の行く先が
たまたまそこだったような
感覚とでもいうか…。


もちろん
道は他にもあっただろう。

人生の岐路の選択で
その先が大きく変わることもある。
気持ちはあっても
選べなかった道もあるだろう。

けれどその時
どんなにベストと思っても
良くない結果になることもある。
特に流れの早い現在なら尚さら。

それなら、少しでも
自ら選ぶことを大切にしたい。
それだけだ。
でも、それだけのことが
難しいときもある。

ただ、
奮闘する人の姿を目にすれば、
その健闘をたたえたくなる
ものではなかろうか。

ならば、今の自分も肯定できる。
そこに行き着くラストとなった。


…………………

余談だが…

三女は観ている途中から
涙を堪えていたようだ。

終演後、
大学内のイルミネーションを見に行く途中
話し始めた途端に
気持ちごと涙も止まらなくなった。

よくよく聞いていると、
2年前、実家の父が亡くなった時
私が三女に話したことを
思い出したとのこと。

劇中で語られた
“葬式が終わるまで泣けなかった話”
それと、
私の“ずっと泣けなかった話”が
重なったのだと。

翌週に公演本番、
三女の宿泊(コロナ禍で日帰り)学習
などを控え、気が張り詰めた状態。

私は
いわゆる持病、
現症の特徴として、
うまくいかないかもしれないという
強迫観念に似た感覚があった。

それを持った状態では
泣くこと自体恐ろしく、
感情を押し込めながらも、
まわりの悲しみに同調するふりを
続けねばならなかった。

その当時、
活動の場を共にしていた
三女にだけは
苦しい胸の内を話していた。

今後の身の振り方について
理解を得る必要もあったため。

活動から帰る車の中、
私の長い長い話に
三女はずっと耳を傾けてくれた。

その時のことが
思い出されたのだろう。



お互いに涙を拭いつつ
イルミネーションへと
寒空の暗い道を歩く。

広い芝生の上には
見渡せるほどの星空が。
暗い中にも満天の星。

この空の
星の数ほど人生もある。

父も、
そして多くの人たちも、
この空で輝いているだろう。

父を偲ぶ旅を前に、
心に残る観劇体験となった。


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