第11場 野獣の邸 → 商人が去る場面はカット。
虎が現れる。
ベル; 虎。
虎、踊る。
ベル; 本物の虎。
虎、おどける。顔を洗うなど。
ベル; 猫さんみたい。
虎、甘えるしぐさ。
ベル; 甘えてるの。可愛い。
ベル、虎の頭をなでる。虎、嬉しい。ライオンが出る。
ベル; ライオン。
虎とライオン、踊る。ジャガーとチーターも加わる。
ベル; あなたはジャガーね。
ジャガー、お辞儀。
ベル; あなたは・・・
ベル、名前が出てこない。チーター、悲しげ。
ベル; チーター
獣達喜ぶ。ミスターモンキー登場。
ベル; お猿さんだわ。こっち、こっちよ。跳ねて!踊って!
ベル; 鹿さんも跳ねて!
鹿も踊る。様々な動物達が現れて踊る。
獣達; ♪ 娘さん ようこそ ここへ まさか来てくださるとは
娘さん ようこそ ここへ 喜んでくださるなら どんなこともいたします ♪
虎はベルを、他の部屋へ続く扉へと誘う。
ベル; こっちへ来いっていうのね。よおし、待てえ!
ベル、虎についていく。獣たち、祈る。
獣達; ♪ 娘さんと ご主人様が どうか仲良くなれますよう・・・ ♪
野獣、ベルの去った扉から飛び出してくる。
獣達; ご主人様!
野獣; ベルが・・ベルが・・・突然、私の部屋へ。
虎; (追いかけてきて)ご主人様、なぜ逃げるのです。
野獣; まだ心の準備が出来ていない。そもそも本当に娘が来るなんて思ってなかった。
獣達;(仰天)え。
野獣; バラを折られた時は無我夢中だった。それに、娘がここへ喜んで来る
わけがない。父親の方が戻ってくると思っていた。バラを折った愚かさを
心底わかってもらうつもりだった。
獣達; ♪ だけど来てくださった ♪
野獣; ♪ 本当に来てくれるとは しかもベルは美しい かいま見ただけでも ♪
虎; どうするのです。会うのですか。会わないのですか。
野獣; あいたい。
獣達; ♪ 会って下さい ♪
野獣; けれど会えない。
獣達; ♪ どうしてですか ♪
野獣; ♪ 私の姿を見ろ この手を この爪を いまわしい野獣だ
恥かしい 消えたくなる 泣かれてしまう きっときっと嫌われる ♪
ベルの声; みんな、どこなの?今度はかくれんぼ?
獣達; ♪ 娘さんが来た ♪
ベル、走りこむ。野獣、逃げようとする。獣達、野獣を留める。とうとう鉢合わせ。
ベル; あなたは・・・
野獣; ベル。
ベル; 言葉を話した・・ならばあなたが、お邸のご主人様。
野獣; いいえ、あなたこそ主人なのです。私を醜いと思いますか。
ベル; 醜いとは思いません。でも怖いと思います。だって私を食べてしまう
のでしょう?
野獣; あなたを食べる?とんでもない。ここにいて下さいますか。
ベル; ええ、父の代わりに。
野獣; ではあなたたこそ、この邸の主人です。家臣たちもみな、そのつもりです。
虎; ベルさま、よくお越し下さいました。
ベル; みんな、言葉を話す。
邸の壁に、フランス語にて「ベルの家」と浮かぶ。
獣達; ♪ ベルさま 新しいご主人様 ♪
ベル; あなたをなんと呼んだらいいのでしょう。
野獣; ただ、あなたと。
ベル; では、あなた。確かにここにいると約束しました。でも分かってください。私は
お父様が心配なのです。
野獣; 多分、家についておいでですよ。
ベル; どうしてわかるのですか?
野獣 ;鏡を。
布のかけられた鏡が運び込まれる、布がたくしあげられると商人の姿が映っている。
ベル; お父様。
野獣; これで様子がわかるでしょう?あなたがここに来てくれて、私もみんなも
どれだけ喜んでいることか。
獣達; ♪ ベルさま ようこそここへ ♪
鏡の枠を取り払い次景へ。
↓
第10場 野獣の邸 → 商人が去る場面はカット。
朝が来て、気づくとベルは邸の庭でバラに囲まれて眠っていた。目覚める。
ベル; とてもいい香りがしたと思ったら・・・なんて美しい花なの。バラって。
先代の王様とお妃様の出会いはバラの花だったとお父様が教えてくれた
けど、どんな出会いだったのかしら?ロマンチックだわ。
虎が現れる。
ベル; またお前ね。見張ってるの?
虎、踊る。
ベル; え・・・踊ってる?
ライオンが出る。
ベル; ライオンも・・踊ってる。
虎とライオン、踊る。ジャガーとチーターも加わる。
ベル; みんな踊ってる。私を慰めてくれるの?
獣達、頷く。ミスター・モンキーが登場しておどける。
ベル; まあ、面白い。
様々な動物達が現れて踊る。
獣達; ♪ ベル ようこそ ここへ これからよろしくお願いします
ベル ようこそ ここへ 楽しく一緒に暮らしましょう ♪
虎はベルを、他の部屋へ続く扉へと誘う。
ベル; おいかけっこかしら?じゃあ、負けないわよ。
ベル、虎についていく。
獣達; ♪ 我等の祈りが届きますように ♪
野獣、ベルの去った扉から飛び出してくる。
獣達; ご主人様!
野獣; ベルが・・ベルが・・・いきなり部屋に飛び込んできて。
虎; (追いかけてきて)ご主人様。何も逃げなくても。
ミスターモンキー; そうですよ。ベル様は素敵な恩の子です。
野獣; まだ心の準備が出来ていない。
獣達;(仰天)え。
ミスターモンキー; つかぬことをお聞きしますが、ご主人様。ベル様がここにお残り
になったのはただの偶然だと?
野獣; 当たり前だろう。まさか本気で残るとは思わなかったんだ。
虎; でもご主人様はバラを手折られた時、異常な程お怒りで・・だからてっきり。
野獣; だってあれは私のだぞ。私だけの。
ミスターモンキー; たかがバラを折られたくらいで癇癪を・・(はっとして)言わ猿です。
野獣; 私にとってはただのバラではない。あれは母上が残して下さったものだ。
ミスターモンキー; 要するにマザコン・・・(はっとして)言わ猿です
虎; ではお会いにならないと?
野獣; あいたい。
獣達; ♪ それなら ♪
野獣; けれど会えない。
獣達; ♪ なぜ ♪
野獣; ♪ 私の姿を見ろ この手を この爪を いまわしい野獣だ
恥かしい 消えたくなる 泣かれてしまう きっときっと嫌われる ♪
ミスターモンキー; しかしながらご主人様。一言言わせて頂くならば。
虎; さっさと言え。
ミスターモンキー; ベル様は王様の求婚を断った大変勇敢で、人を見る目がある
方ですよ。ご主人様の見かけで判断するような人では・・・
ベルの声; みんな、どこなの?今度はかくれんぼ?
ベルと野獣、鉢合わせ。
ベル; あなたは・・・
野獣; ベル。
ベル; あなたが、お邸のご主人様。
野獣; ああ・・・そうだ。どうだ。怖いだろう。
ベル; 私を怖がらせたいの?それは無理よ。全然怖くありません。でも悲しいわ。
これでもうこの世とはお別れだと思うと。
野獣; どういう意味だ?
ベル; だって私を食べるんでしょう?
野獣; 食べる?私が?お前を?冗談。そんなまずそうなもの。
ベル; (カチンときて)失礼ね。
野獣; まずそうなものをまずそうと言って何が悪いんだ。
ミスターモンキー; ああ・・・ちょっと待って下さい。
ベル; ・・・猿がしゃべった。
ミスターモンキー; ご主人様がおっしゃりたいのはこうです。美しいあなたを食べる
なんてとんでもない。そうですね?ご主人様。それでベル様のおっしゃる
事の真意はつまり、容姿を批判された・・とお怒りであるわけです。
野獣; そうなのか?
ベル; あなたこそ。
野獣; 食べる気はない。それにお前は・・その・・醜くない。
ミスターモンキー; ご主人様、そういう時は直接話法で美しいとおっしゃらなければ。
野獣; う・・・美しい。私のバラと同じくらいに。
ベル; ありがとう。
虎; ベル様、邸の獣一同、喜んであなたをお迎えいたします。
ベル; まあ・・あなたも話せるのね。不思議だわ。このお邸全体が不思議の国の
ようだけど。でも私、一つだけ心配事が。
野獣; なんだ。
ベル; お父様の事です。きっと心配しているわ。
野獣 ; 鏡を。
布のかけられた鏡が運び込まれる、布がたくしあげられると商人の姿が映っている。
ベル; お父様。
野獣; これで様子がわかる。好きな時に見ればいい。
ベル; 嬉しい。あなたってとても・・いい人なのね。
野獣; いい人?
獣達; ♪ ベルさま ようこそおいでになりました ♪
鏡の枠を取り払い次景へ。