陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

そろそろ統一地方選

2019-03-12 | 政治・経済・産業・社会・法務

二月半ばくらいから、郵便ポストに見慣れない封書やハガキが届いています。
スーツを着た中高年者の写真が印刷されたパンフレット、ビラ、そして後援会所属のお願い。4月7日の統一地方選前半戦まで一箇月を切りました。選挙ポスターの掲示板もそろそろ用意されていますよね。

2019年春の統一地方選挙とは。
知事選、道府県議会議員選挙、政令指定都市の市長と議員の選挙が4月7日に。それ以外の市区町村の首長と議員の選挙が4月21日に、足並み揃えて行われる一大政治イベント。それこそ、今年の春は国内、選挙だらけなのです。

そもそも皆さんはお住いの自治体の議員さんの顔と名前を憶えていますか?
国会議員なら県代表数人だからいいとして、県議会、市議会、町議会となると、地元の知り合い以外は知らない人ばかり。以前、ある一件で相談したもと町役場職員さんも定年退職後農業をされていましたが、どうやら出馬するらしい。事務所の看板を自宅前に出していましたので。行政に関わってきた人や、ある程度の高度な専門職に従事して、教育、福祉、経済、社会保障、環境問題などなどに明るい方ならいいですけれど。小泉政権からこの方、なんとかチルドレンとかの、党首人気にぶら下がった泡沫議員さんが増えたせいで、どうも代議士さんの実行力には不信感がありますよね。

案の定、今回、郵送されたパンフにある、立候補予定者の経歴にしても、ちょっとなあ…と首を傾げたくなることしきり。
書かれてあることも、自治体の広報誌によくある「豊かな教育のある」「子育てのしやすい」街づくりとか、すでに目垢のついたスローガンばかり。実際にどんな課題があって、そこを具体策でどう改善していくのかを説かれていない。何がしたいのか、よくわかりません。失礼なのですが、とにかく、議員になって就職したいという気持ちしか見えなくて。ひどいと、民主党とか共産党とかがそうですが、打倒安倍政権とか、いまの知事の県政はどうたらとか、そんなアンチ意見ばかりです。

地方の課題といえば、人口減少対策で、大企業誘致とか産業振興とかですけれど、それができそうな経営者クラスの人は政治家なんかにはならないのですね。健康保険料率もかなり上昇していて、ご当地県の一般保険料率はすでに十数パーセント。全国的にもかなり高くて、現役世代の医療費負担がかなり厳しいのに、そこに触れようとしません。下手に具体的な公約を掲げると、実行できないときに失態を衝かれるから。

目下、話題をさらっているのは大阪の知事と市長。
大阪都構想が進展しないことに業を煮やした松井一郎大阪府知事と、吉村洋文大阪市長とが、そろって辞職。4月7日の統一地方選にあわせて、知事選、市長選も行われることに。しかもなぜか、知事と市長とを入れ替え出馬するそうです。橋下徹氏のときもありましたけれど、なぜ、この二人が入れ替わりしないといけないのか意味がわかりません。大阪都構想はすでに一度住民投票で否決されており、大阪市を四区に分割すると二重行政が解消すると言われているものの、かえって新設の庁舎や人件費が増えて行政コストがかさむとの指摘もあります。大阪万博を誘致したのならば、責任もって知事を務めるべきではないでしょうか。もう大阪府民ではないのでよそ事だけれど、いまの知事と市長は安定しているし、よく頑張っているので、やたらと都構想ばかりに拘泥すべきではないと思うのですが。

いっぽう大阪維新の会に反する自民党は、なんとタレントの辰巳琢朗氏を知事候補に擁立する構え。
正直、いくら言動が潔癖な人でも、政治経験が皆無の人をいきなり首長に担ぎだすのは、そろそろやめていただきたいです。傀儡にしたいのが見え見えですから。もと横綱の貴乃花親方も日本相撲協会を退職して、政治家デビューするのかなどと騒がれていますけれど、ある一定の組織で揉め事を起こすような人は、我が街、我が国の顔になるのは遠慮してほしいですね。そういえば、数年前に小池百合子都知事の都民ファーストとかも、大騒ぎしていましたよね…。国と一都道府県、府県と市町村で、内ゲバで争っている場合ではないでしょ。(なお、辰巳氏はのちに辞退したので、自民党は懲りずに、橋下・松井府政下での副知事だったもと行政職員を擁立するそうです)

地方議員や首長の逮捕や失言問題などが相次いでいますよね。
自民党でも経験の浅い議員が、最近、女性問題で離党離職したばかりですし。昔ほど大金の政治汚職問題が消えた分、これまではあまり話題にならなかった政治家の素行の悪さが目に付いているのかもしれませんね。地方議会は会社員との兼業が禁止されていたので、なり手不足。そのせいか、失礼ながら、経歴がパッとしない人しか応募しません。

ほんとうは、きちんと会社員として勤めて、仕事を誠実にこなしてきた、市民感覚のある人が相応しいのに、功名心だけがあるフリーターみたいな人やら、本業が斜陽になったタレントやら作家さんやら(都知事の石原さんは嫌いではなかったけれど)が口触りのいいスローガンを叫んで支持を得るのは、居たたまれない気持ちになりますね。若い人や子育て経験ある女性が政治家になりづらいから、子育てや若者の意見が政治に反映しづらいと言われていますけれど、たとえば弱者の立場にある当事者がたちまち政治家になったからといって、彼らの抱える被害者意識からの環境改善の訴えはできたとしても、全人的な立場からの行政課題解決ができるかといえば、そうではないことも多いわけです。一部の利益のために代表者になることはできないわけです。

ひと昔前だったら、世襲制もあったのですが、政治活動にお金がかかるのか敬遠されることが多いようです。
私の祖父のいとこは県議会の議長を務めたひと(故人)でしたが、その息子、孫世代はまったく政治には関与していません。親御さんが政治家だったことで、辛い思いもあったのではないでしょうか。田舎の人間関係って厳しいですものね…。消費税導入をした竹下登元首相のお孫さんのタレント氏もよくいじめられたらしいですし。別に二世、三世だろうと、(鳩山由紀夫氏みたいなのでない限り)へたな政策さえしなければ歓迎しますけれど。

いずれにせよ、4月7日は進学、就職、転勤を控えた慌ただしい時期です。
後半戦の21日でも連休前で、しかも改元前ですから暇なわけがない。住民票移動して間もなければ投票権も得られなくて、今回の統一地方選挙はかなり投票率が下がることが予想されます。厚生労働省の不適切統計問題にしても、文部科学省などの官僚の不正にしても、さらにはすでに忘れ去られたであろう国務大臣の疑惑にしても、自民党には火種があるにはあったが、選挙の時だけ結託して、政党交付金欲しさに分裂していく野党には国民はあきれていますし。大阪はともかく、あまり盛り上がっていないのが地方の現状です。

地方の過疎地の国会議員定数は減らされて合区にされるし、合併で市町村が減っているし、政治に無関心なひとが増えるのは当然でしょう。来月になるとまた選挙カーがうるさくなることを思えば、幻滅してしまいます。まあ、ぶつくさ言いながらも、けっきょく投票は行くんですけどね。いまの住んでいる自治体の首長さんにとくに不満はないので、応援の意味をこめて。というか、立候補者が出てくれない方が選挙がないので静かでいいかな、と(酷)。

来年は東京五輪で、万博も控えていて、訪日外国人も増えて観光利益が上がって、と経済面のいいところばかり見えますが。今年8年目を迎えた東日本大震災をふくめ、ここ近年多発する地震、豪雨、台風、噴火による被災地ではまだ生活再建の見通しもたっていない、通常の暮らしには戻ったけれど被災経験者とそうでない者との意識格差に苦しんでいるという報道もあります。やむを得ず、縁故もない場所に住まわざるをえなかった人にとりまして、その地域の代表を決めることに関心が深まらないとしても致し方ないのかもしれませんよね。


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