陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

アニメ「輪るピングドラム」最終回(二)

2012-01-17 | テレビドラマ・アニメ



アニメ「輪るピングドラム」の最終回──サブタイトル「愛してる」──の考察、つづきです。

(5)ピングラムの正体が判明!
「僕たちの罪も、僕たちの愛もみんな分けあうんだ」と言いながら、晶馬、胸のなかから赤い球=ピングドラムを抜いて返す(驚!)。陽毱が受け取ったそれは半分に分かれて、冠葉の前に。回想シーンが重なって、かつて飢え死にしそうになった晶馬に、冠葉が林檎半分を与えていたことが明らかに。二十三話(アニメ「輪るピングドラム」第二十三話(二))で晶馬がみたイメージはこの自分を予見していたのか。

そして、冠葉は晶馬にピングドラムを与えていたことを思い出してもらいたくて、想い出し球を撃ったのでしょうか。眞悧の魔法では、所詮、陽毱を生かし切れないことを知っていたから? それとも、またしても陽毱の命を盾に、悪事に参加させられるのを憂えて? いずれにせよ、冠葉は日記の半分を燃やした張本人なので、呪文に頼らず、すなわち運命の乗り換えをせずに陽毱を救おうとしたはず。

(6)運命の乗り換えが開始!
晶馬が体内のピングドラムを摘出して、冠葉へ返還するそのさなか、いきなり苹果が呪文を発動。このシーン、いきなりすぎて、苹果が勇み足でむざむざ晶馬の犠牲を無駄にしてしまったように思えました。いやいや、ひょっとしたら傍観していた苹果ちゃんは、兄妹三人ともを救うために、自分が捨て身になろうとしたのかも。

(7)冠葉が消失!
乗り換えアナウンスが行われ、気を失った陽毱を抱えた冠葉が列車の乗り換え。冠葉がガラスの破片となって消失したシーンが痛ましい。乗り換えが本格的に発動する直前のようなので、冠葉が消えたのは眞悧を裏切った呪いのせいなのか(だとしたら、眞悧に延命された真砂子にも影響が及ぶはずなのですが…)

(8)晶馬が消失!
乗り換えの代償として炎に包まれる苹果。その彼女を抱きしめ、その罰を引き受けてしまったことで晶馬が焼失。「ありがとう、愛してる」の言葉を残して去っていく晶馬くん、最後の最後に男を立てることができましたけれど、別に焼かれるのは帽子(→マリオさん with お爺様の亡霊(酷))でよかったんじゃないの?(爆) 好きな女の子を救ったというより、兄貴の後追いをしたとも見えるんですが。テロを起こした冠葉は致し方ないとして、晶馬まで犠牲になったのは、犯罪加害者になったらその血族は、被害者に対しては命を投げ捨てるほどの罪を背負わねばならない、という戒めだったのかもしれませんが、なかなか厳しい答えですよね。箱の監獄シーンから察するに、晶馬は実の両親からも選ばれていなかった、けれどその哀しみがあってこそ、捨て子の陽毱を救ったわけで。親世代からの因果を断ち切って幸福になってほしかったなという願いはあっただけに残念。

(9)桃果と眞悧の対話
運命列車が去ってしまった暗がりの線路に残されたのは、眞悧と桃果。眞悧の背後にあるのは本棚なので、あの図書館なのでしょうか。けっきょく、諸悪の根源たる彼が断罪されることはないのですが、彼は概念がかたちをとったようなものなので消えることはないのかも。

(10)乗り換え後の世界
電車で倒れていた陽毱と苹果は仲良しさんに。陽毱はおじさん夫婦と暮らしている様子。ダブルHとも知り合いではないらしい。
失われた子供時代から抜けだすために互いに愛のある未来を築こうと決意するのは、多蕗とゆり。桃果のことは覚えてないのでしょうか。まともに恋愛をしたわけではないのに、サブキャラが余りものでくっつかせるというのは悲恋ものの定石ですね。

真砂子は双子の兄のことは夢だったと語る。マリオさんも健康そうでなにより。
陽毱は自分に兄がいたことは覚えていないのですが、ぬいぐるみにあった手紙を発見して、頬を自然と伝う涙を押さえられない。自分が生き残るために消えてしまった存在をこれから思い出すのかもしれないし、封印されたままなのかもしれない。
このふたりの妹の事後談はとても対照的ですね。真砂子の描いたキャンバスに兄の面影はない。いっぽう、陽毱には目に見えるかたちで気持ちを伝え残している。それはやはり愛情のなせる業であり、二人に対する冠葉の想いの深さの違いなのかも。

陽毱の家の前を通る男の子ふたりは、冠葉と晶馬の生れ変わりなのか。第一話で宮沢賢治に関して議論していた少年たちとは別人なんですよね。


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