日経新聞2024年11月16日朝刊の土曜版別刷りに、企業ノベルティグッズに関する記事があり、興味深く拝読しました。
ノベルティグッズとは企業のロゴやマークをあしらった無償配布のグッズのこと。そのルーツはなんと江戸時代にまで遡る(※)といわれ、かつては懸賞やキャンペーンでしか獲得できないプレミアムなもの。ボスジャンと言われた渋いおじさんの横顔マークのジャンパーなどが思い浮かびますね。人気が過熱したものはコレクターアイテムとして高値で取引されるケースもあるのだとか。
1990年以降から現在にかけては、「ノベルティ」は廉価品の意味合いを帯びてきます。ステッカー等のような大量生産、大量配布が主流。イベントや講演会などへの参加者へのお土産品代わりに。テレビ番組の投稿の謝礼品としても。
しかし、残念ながら、こうしたノベルティグッズは、その6割が未使用のまま廃棄されている実態が明らかに。
捨てた理由は「デザインが好みではない」「企業名やロゴがじゃま」「実用性が低いから」と続きます。経営者の鶴の一声、愛社精神満載で意気揚々と制作したグッズも、他者の顧客たちからみれば、ありがたくないものに映っているのかもしれません。悲しいことですね。個人的には、社長さんの顔を絵にしたキャラ絵のものはちょっと…と思います(爆)。
大量生産ですから安価なものになりがち。あるいはストラップや缶バッジなどは流行りすたりもある。百均で自分好みのデザインが買えるようなものばかり。別にあなたの企業を応援しているわけじゃないのに持たされても。あるいは不祥事などで消費者離れが起きて、大量廃棄なんてこともありうる。
SDGsにうるさくなった企業側も意識をあらためて、商品購入すれば一本おまけするバーコードキャンペーンのような、お得感を打ち出している模様。処分に困るプラスティック製品よりは、商品を値引きしてという消費者のニーズをつかんだ路線へ変更しつつある、と。
日経の記事には、使い切ったあとで植えると開花する「はなさくえんぴつ」や、架空の書籍カバーをかぶせた「文庫型メモ帳」などを紹介。
無駄なく、本当に必要なものを最小限に手元に、という近年の生活感覚の変遷に、ノベルティ業界も合わせるべきではないか、と結んでいます。
かつてディスプレイ業界で企画編集職にいた私も、こうしたノベルティグッズには馴染みがあります。
私の当時の勤め先は幟やタペストリーなどの店舗の装飾品が多いので、少数ロット生産品が多かったものですが。いただくものは、マウスだとかオフィス向けの事務用品が多かったような。マウスパッドやUSBなどはありがたかったですね。イベント出展をすると他の企業のブースも回るので頂いたことがあったり。使い勝手が悪いのはキーホルダーみたいな、ただのお守りじみていて、装飾性が機能を上回ってしまうものでしょうか。
一般客でも金融機関のロゴ入りの食器だとか、文具やオフィス雑貨など。ひと前で見せなくてもよいものであれば、自宅で気軽に消費できたりもしますよね。
いまでも長く愛用しているもののひとつが、同居人が某銀行からもらったという魔法瓶です。普段使いはしませんが、空き家の仏壇用のお茶を持参するのに活用しています。建設会社などからもらう名入り入りのタオルも大量にありますけども、雑巾にしたり、土汚れを防ぐのに便利だったりします。使い捨てできるので、あっても損はないアイテムです。最近だとエコバッグやウェットティッシュなどの衛生用品も、いただいて損はない景品ですね。スポーツブランドみたいなロゴそれ自体がかっこいいと認識されでもしない限り、恒久的に使い続ける製品はノベルティには向いていないと感じます。
私は某流通業界大手の企業関連の財団の奨学生だったときに、その会社のロゴが入ったハンカチや万年筆をもらったこともあります。
特別感がある記念品めいたノベルティならば、末永く手元に置いておきたいものになるのではないでしょうか。
いちばんもらって嬉しいのはカレンダーでしょう。
個人事業所の代表や総務事務の責任者ならば企業の社会保険委員もかねているので、社会保険委員会からけっこう豪華な手帳や卓上カレンダーが秋口にはわんさか届きます。もちろん個人専用ではなくて、会社のデスクに据え置きして、書類の締切等の予定を書き込んでいきます。カレンダーでおススメなのは、某大手生命保険会社から毎年とどく動物カレンダーでいつも癒されています。クリアファイルも嬉しいですが、透明性が高いものがいいですよね。
ノベルティグッズのサイトを眺めると、わりと安価な価格帯で発注できるようです。業績が好調な企業であれば、経営者や広報部の方がこうしたグッズを思わず欲しがってしまう理由もわからなくはありませんね。印刷技術が進化したため、個人のクリエイターでも、自作の絵をオリジナルグッズにしやすくなっています。
余談ですが、私の亡き父はその昔、飲食店を経営していましたので、お店の名入りのマッチが残っていたことがありました。
同人グッズを作るのと同じで、こうした自分のお城のブランド価値を高めるためのグッズをこしらえて配布することは、事業主にとってのロマンだったのではないでしょうか。しかし、現在のノベルティはあくまでも消費者目線、企業の宣伝は控えめに、のほうが顧客には受け入れられやすそうです。
※1683年に豪商の越後屋(現在の三越)が掛売から現金商売へあらためるためにはじめた引き札がはじまりとされています。宣伝文と浮世絵を入れて、店頭や街頭で無料配布されたもの。いまでいう広告チラシのことですね。娯楽の少なかった町人には大人気となって、自宅に飾られていたようです。美術的価値があるとされ、ミュージアムに収蔵されていたりもします。現代でいうと、さしづめ、人気絵師とコラボした企業や自治体のグッズみたいなもの、なんでしょう。
参照サイト:「ノベルティの起源と歴史【金沢で作られた引き札も掲載】」2019.05.01 HAQU(金沢の金箔ノベルティグッズの会社)
(2024.11.16)