夏だからなのか、物騒な事件が続きましたね。
不謹慎ながら夏だからこそ、ひんやりする物語が観たいこともあります。
1956年作の映画「ハリーの災難」は、巨匠アルフレッド・ヒッチコックの監督作品中、異彩を放つ逸品。
殺人劇を茶化して、コメディにしてしまったところがすごい。
紅葉美しいヴァーモントの森の中。少年が死体を発見する。
少年の母は、その男に覚えがあるようだが、眠っているだけと教えて側を離れた。
次の発見者は猟銃を構えた老船長アルバート。
彼は誤って自分が撃ち殺したのだと思ってしまった。証拠隠滅のため、死体を埋めようとするが、今度は若い画家サムがやってきて、できない。ホームレス、オールドミスの女性までが発見する。だが、誰も死体を警察に届けようとはしない。
死体の男を巡って、各人の思惑が入り乱れ、団結して埋めては、掘り返すの繰り返し。
ハリーというのは、この屍と化した男のことで、終始顔ははっきりしない。
果たしてハリーは誰かに殺されたのか? みんながみんな、動機があるように疑われてしまう。そして、死体を嗅ぎつけてくる保安官代理をどう切り抜けるのか。
殺人劇ではあるけれど、殺人ではないようなコメディッタッチの秀作。
死んでいるハリーには悪いけれど、なぜか、幸せな気持ちにもなれてしまう。彼のおかげで、みんなが幸福を得たわけですから。
扉が意味もなく開いてしまうなど、ヒッチコック特有の恐怖感をあおる演出も健在。
主演は老船長にエドモンド・グウェン。画家のサムに、後年「チャーリーズエンジェル フルスロットル」で声のみ出演のチャーリー役をすることになるジョン・フォーサイス。少年の母ジェニファーにシャーリー・マクレーン 。本作は彼女のデヴュー作。「マグノリアの花たち」では、偏屈ものの未亡人ウィザーを演じましたね。
(2010年7月29日視聴)