
就職、転勤、進学、卒業。春はなにかと慌ただしい。そろそろお引越しシーズンですよね。
引っ越し業界は人手不足らしくて、今年はなかなか予約をとるのが大変なのだそうです。レ●パレスの賃貸マンションの手抜き工事のせいでかなりの被害が出ていると報じられていましたが、うまい儲け話にはたいがい落とし穴があるものですよね。うちの近所にもあるのですが、そこのオーナーさんは建設当初(バブル期)はハワイ旅行にも無料で招待してもらえたそうで、ほくほく顔だったそうです。しかし、いまは…。
貸す方も気苦労が絶えませんが、集合住宅は借りる方も気を遣いますよね。
上階や隣の部屋の住民がトラブルメーカーだったりすると。独り暮らし時代の私もいやな思い出があります。大家さんにはよくしていただきましたが。しかし、持ち家でも負担が大きいので、借りぐらしとどちらがいいのか判じかねますけれど。
さて、今回紹介する映画は、賃貸住宅に関するもの。
1987年のアメリカ映画「ルーム・アップステアーズ / 空き部屋あります」(原題:The Room Upstairs )は、共同アパートを経営するこころの乾いた女性が人間性にめざめていく、ハートフルドラマです。
ルーム・アップステアーズ 空き部屋あります [DVD] | |
![]() | コンマビジョン 2008-03-25 売り上げランキング : 80971 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
大きな一軒家を共同アパートとして経営するリア・レイゼンビーは、障害児の養育施設ではたらく指導員。アパートにはエリーとケヴィンのライアン夫妻、アジア系でハーバード大生のディーナ、学生結婚をしているマンディとジョージのジャノビッチ夫妻が暮らしつつも、互いにプライバシーに干渉しあわない。悩みの種は条件のいい部屋が売れ残ってしまうこと。
ある日、トラヴィス・コールズという男が最後に残った部屋の借り主としてやってきます。チェリストであるトラヴィスに、深夜の演奏はお断りと釘を刺すなど、リアは牙城を守ることに必死。新入りのトラヴィスが入居者となじみ着々と交遊を結んでいるのに、リアはいまだに距離を保っています。
両親が遺した一軒家の維持費ほしさにしがない家賃収入を稼ぐサラに、処分を迫る兄のフランク。
相続問題でよくありがちな争いでもありますね。想い出の家を処分できなくて空き家のままにしておくよりは、まだマシだと思いますが。
さらには職場では、ナイフを振りかざす危険な問題児の扱いにも手を焼いています。やがて、リアは札付きの不良娘スーザン・ティファンの教育と更生を任されます。反省の色の見えないスーザンに傷つけられ、下宿ではライアン夫妻の仲がこじれてエリーが睡眠自殺を図ってしまうなど気の休まることはなく。心配したトラヴィスにも八つ当たりしてしまう。自信をなくしたリアは、職を辞し、いっそ家も売却してしまおうかと迷うのですが…。
リアの自信をつなぎとめたのは、かつて手塩にかけて育てた生徒が自立しているという事実。
そして、視覚障害の少女の教育がうまくいったこと。幼年時代の父との疎遠さや思い出を家の壁についた古傷に見出そうとするリアは、しだいにエリーやトラヴィスともこころを通わせていきます。
リアとトラヴィスがそれとなく恋仲になりそうなことが伺える予定調和的なラスト。ただ欲をいえば、教師という設定をぞんぶんに活かし、あの問題児との和解が描かれていればいいなと感じました。
ロマンティックな女性向きのドラマといえますね。
監督は スチュアート・マーゴリン。
出演はサラ・ジェシカ・パーカー、 ストッカード・チャニングほか。
余談ですが、外国の映画に出てくる家は、(セットでつくりこんであるのもあるでしょうが)、なかなかオシャレなのが多くて楽しいです。作風にもよりけりですが、壁紙がやたらとカラフルだったりしますよね。日本のドラマのやたらとバブリーで現実味のなさそうな高級マンションもあれば、生活感がやたらとにじみ出すぎている住まいもあるけれど、あれは海外の視聴者からみればどう思われているのか気になりますね。
いまは家も車も所有することにあまりこだわらなくなった世代が増えたと言われています。
ただ、借りぐらしは高齢になって収入がなくなってくると貸し渋られることもが多いとも。ひところ流行った団地もかなり寂びれていて、区分所有権をもった住民が反対しているせいで建替えできないとか、問題が起きているそうですね。私は居住者が少ない学生寮かマンションしか借りたことがないのですが、大きなマンションに住んでいた友人は毎月会合があるので大変だとこぼしていたのを聞いたことがあります。人口減少化時代に、中核都市の交通の便がよい地域に住民を集めるコンパクトシティ構想なるものがあるそうですが、田舎の一軒家でのんびり暮らしたいひとには余計なお世話だとしか思えませんね。
(2011年6月1日)