上村悦子の暮らしのつづり

日々の生活のあれやこれやを思いつくままに。

5月  深呼吸⑴

2019-04-03 11:21:39 | エッセイ
  
ヨガを始めて、もう30年になる。
30代半ばにホルモンのバランスを崩してしまい、治療のために飲んだホルモン剤の影響で、
急に増えた体重をどうにかしたいと通い始めたのがきっかけだった。

会場が家から歩いて10分ほどという足の便のよさもあったのだが、いい先生に出会えたことが大きかった。
最近ありがちなパワーヨガやホットヨガなどの流行を無視し、ヨガ本来の良さを関西風ユーモアを交え、
メリハリの利いた口調でポイントごとに分かりやすく教えられることで、
私のようななまった身体にもすんなりと入り込んだ。
帰りには身体はもちろん、心までリフレッシュされて、
「さあ、これからまた1週間頑張るぞ」という清々しい気持ちにさせてくれたのである。

このヨガの真骨頂が呼吸である。
息を吸って吐くという動作は生きている限り無意識にしているものだ。
しかし、意識してするとさらに気持ちがいい。
日常の呼吸では、肺の空気が5分の1程度しか入れ替わっていないのだが、
下腹を絞めるように静かに長く息を吐き、続いて胸や脇、おまけに背中まで、
いっぱいに空気を吸うような深い複式呼吸をすると、
肺の5分の4ほどの空気が入れ替わるそうで、不思議なくらい心が落ち着いていく。
体内の細胞にまでも酸素が十分に供給されるらしく、血行がよくなることで、
背骨の両脇を通る交感神経と副交感神経のバランスがよくなり、
気持ちがおだやかに、カラダも力が抜けて心もやわらかくなっていくのである。

呼吸のせいか、長年ヨガをやっていると、カリカリしたり、腹立たしく思うことも徐々に減っていく。
先生の口癖でもある。
これまで苦手で「あの人のここが嫌い! どこそこが気にいらん!」と思っていた人と出くわしても、
「あの人はどこかで大変な経験をしはったからああなんや」と、上手くかわすことができるようになれるんやと。
ご近所さんに何か嫌事を言われても、「蚊帳の外」と聞き流すことができるようになれるというのだ。

ボディワークの専門家にも、「深呼吸ひとつでも、堅くなったカラダをゆるめる立派な体操」と聞いたこともある。
自分のイライラから必要以上に子どもを叱って後で反省するよりも、まず深呼吸してみるのが得策のようだ。

子どもに限らず、家事を少しでも手伝わなきゃと気づきもしないパートナーに腹を立てる前に、
あるいは、狭い歩道で道を譲っても、さり気ない挨拶一つできないヤンママに呆れる前に、
スーパーのレジで少しでも前に進もうと胸までつけてオバチャンに、ムカムカする前に
「深呼吸」をしてみるのがいい。
深呼吸ひとつで家族も、社会も安泰。ゆとりが生まれる。
安上がりなストレス解消法である。
コメント
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