7日から始まる主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を前に、4日付英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)は、「行方不明の日本 姿が見えないサミット主催国」との見出しの辛口論評を掲載した。
論評は「日本は世界で2番目に強力な経済を持ちながら、政治的には姿を見せていないも同然だ」とし、「サミット主催者の福田康夫(首相)はベルリンからブエノスアイレスまで(新聞の)一面に登場するだろう。それが閉幕したとき、日本は影の中に戻っていきかねない」と警告した。
論評は「台頭する大国、成熟した大国とも、各国政府はかつてなく時間をかけて、地政学的展望を探し求めるべく占いの水晶玉に見入っている」とし、そうした取り組みにおける日本の不在を指摘し、「そればかりか、新しい秩序における日本の地位は滅多に、仲間の国々からの言及にすら値しない」と断じている。
論評は、世界の力の均衡が急速に変化しつつあるとし、「アジアの世紀とは中国とインドのことだ」と、日本に代わって両国が台頭してきたと言明している。
日本の影響力低下の背景として、「(バブル経済)崩壊が日本の政治家の自信を奪ったこととソ連崩壊が日本の地政学的同位性を作り直したこと」を挙げ、その結果、第二次大戦後、米国にとり「西側の一員だった日本」の重要性が低下したところに、中国の飛躍的成長が重なったと見る。
論評は「日本の最大の利益は、規範に基づく国際秩序を強化、拡大して、中国などの新興国を組み入れることにあると思う。何にも増して、世界のこの地域は強固な相互安全保障体制を必要とする」と、日本の将来の選択肢も提示、「羅針盤なき国家」からの脱却へ向けた決断を促している。 (MSN産経ニュース)
外国から、「行方不明の日本」や「羅針盤なき国家」に見えても、日本人にはそれがよく見えない。日本の存在感低下の原因について論評は「世界の力の均衡が急速に変化しつつあるとし、『アジアの世紀とは中国とインドのことだ』と、日本に代わって両国が台頭してきたと言明している」と産経記事は伝えている。
中国やインドの台頭で、日本は経済力も存在感も失いつつある。敗戦で置き忘れてきた国家の形は輪郭も見えなくなる一方に思える。アジアや国際社会の外の事情の変化に日本は対応できていない。
大きな問題の一つは、日本人の内の意識である。日本は「国」意識の欠如の中で、敗戦後生きてきた、幸運にも生きることができた。(アメリカの庇護と支配のもとに)。1952年サンフランシスコ条約発効後、表面的に国の主権が回復されたかのように見えても、その実、「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」(日本国憲法前文)と、誰だか定かでない「諸国民の公正と信義」に日本人の生存を丸投げしたまま、それについて考えることを忘れた。そしてこの問題はいつの間にか「タブー」であるかのように覆い隠され、占領下で米国が「敗戦国」に与えた憲法を改める議論さえまだ活発ではない。「羅針盤」を日本人自身が握っていないのである。
敗戦国、そして保護国であるかのような意識から抜け出し、自立した国家としての主権意識を早急に取り戻すこと。(それなくしては、周辺国との間に「規範に基づく国際秩序」を強化、拡大もできないだろう。)
「行方不明の日本 姿が見えないサミット主催国」 今の日本と日本人についての的を得た言葉である。日本人の国意識はとっくに行方不明。その結果、当然「国」も求心力を失い、行方不明になりつつある。それは日本人が、「会社益」や「私益」や「外国益」は見ることができても、「国」や「国益」という概念や軸を見失っているからではないだろうか。60年の精神的空白は大きい。