「中学生はこれを読め」 書店主が推薦リスト、全国波及 (朝日新聞) - goo ニュース
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”札幌の本屋のオヤジは気がついた。「最近の中学生は本を読まないと言うが、うちには彼らのコーナーがなかった」。オヤジは500冊のお薦めをリストアップし、専用の棚を作って、こんなキャンペーンを始めた。「本屋のオヤジのおせっかい 中学生はこれを読め!」。それから1年半、おせっかいは全国に広がっている。
札幌市西区で「くすみ書房」を経営する久住邦晴さん(55)が04年8月に始めた。リストには、定番の夏目漱石や太宰治のほか、石田衣良の「池袋ウエストゲートパーク」、あさのあつこの「バッテリー」など新しい作品も並ぶ。
持ち帰りできるリストを店に置き、推薦本に共通の帯を巻く。この試みが各地の書店で注目を集め、北海道では街の小さな本屋からチェーンの大型書店まで60店、静岡では130店が参加。愛知は10月から約100店で展開する見通しになった。
中学生は本屋に来ない。だから中学生用のコーナーがない。久住さんは、その発想を逆転させた。顔見知りの常連も出てきた。それ以上に大人が関心を示した。リストを手にした親や教師から、「お薦めは」と聞かれる。子どもの読書量や性別を聞き、「じゃあ、これとこれ」と選ぶ。
全国に広がるきっかけは、講談社が主宰し全国370店が参加する「書店未来研究会」の北海道、東海の合同支部会が昨年9月札幌で開かれたことだった。岐阜市にある自由書房の篠田元弘社長(61)が会場に向かうタクシーの中、運転手から「小さいけど面白い本屋がある」と聞きつけた。会場で聞くと「久住さんに違いない」。翌日、仲間が、くすみ書房に足を運んだ。
札幌での話を聞きつけた愛知県書店商業組合理事長で豊川堂(豊橋市)を経営する高須博久さん(55)は理事会に諮り、県内での展開を決めた。「自分のお薦めを独自に加えたい」という。「論語」やジイドの「狭き門」なども、ぜひ読ませたい。「将来の読書人口を増やすためには種まきが必要だ」
静岡県藤枝市の藤枝江崎書店の江崎直利社長(49)は、県書店商業組合が昨秋、参加店を募る前から知っていた。ネットで検索し「これ読め」のホームページ(http://www.k2.dion.ne.jp/~sa-shibu/)に出くわしたからだ。リストを印刷して店に置き、学校に配ると好評だった。出版社の提案ではなく、自ら仕掛ける企画は初めて。「とかく暗くなりがちな業界にあって、勇気をもらった」と話す。
久住さんのところには、青森県や群馬県の中学校や図書館からも「使わせてほしい」とのメールが来る。「これをきっかけに、児童書と一般書の中間のジャンルが定着してほしい」と言う。
500冊の推薦リストは今夏、北海道新聞社がブックレットとして出版する予定だ。
◇
「中学生はこれを読め!」のリストから
笹山久三「四万十川 あつよしの夏」
ミヒャエル・エンデ「モモ」
阪田寛夫「まどさんのうた」
手塚治虫「火の鳥」
橋本治「桃尻語訳 枕草子」
岡本文良「植村直己・地球冒険62万キロ」
村上龍「13歳のハローワーク」
金城一紀「フライ,ダディ,フライ」
R・フリードマン「ちいさな労働者」
松江哲明「あんにょんキムチ」
ジョン・シーモア「完全版 自給自足の本」
S・キング「ゴールデンボーイ」
三浦綾子「塩狩峠」
宗田理「ぼくらの七日間戦争」
辺見庸「もの食う人びと」
中島義道「うるさい日本の私」
向井万起男「君について行こう」
乙武洋匡「五体不満足」
重松清「半パン・デイズ」
さそうあきら「神童」
河野美香「学校で教えない性教育の本」
吉岡忍「奇跡を起こした村のはなし」
夏目房之介「マンガはなぜ面白いのか」
U・K・ル=グウィン「ゲド戦記」
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
五味太郎「大人問題」
さくらももこ「まる子だった」
吉本ばなな「キッチン」
小林紀晴「アジアン・ジャパニーズ」
大平光代「だから、あなたも生きぬいて」
ビートたけし「少年」
中原中也「中原中也詩集」
茨木のり子「倚りかからず」
J・R・R・トールキン「指輪物語」
りぼん・ぷろじぇくと「戦争のつくりかた」
養老孟司「バカなおとなにならない脳」
森本哲郎「生き方の研究」
大塚英志「物語の体操」
川崎洋「ことばの力」
サンテグジュペリ「星の王子さま」
中沢啓治「はだしのゲンはピカドンを忘れない」
マーガレット・マーヒー「めざめれば魔女」
永六輔「職人」
柳美里「水辺のゆりかご」
魯迅「阿Q正伝・故郷」
今西祐行「肥後の石工」
宮脇俊三「増補版 時刻表昭和史」
斉藤孝「声に出して読みたい日本語」
内田樹「先生はえらい」
萱野茂「アイヌ ネノアン アイヌ」
(注)2005年のリストから(順不同)。今後150冊ほど入れ替える予定。”