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唐木田通り 26

2007-01-01 14:00:25 | 唐木田通り
近くの喫茶店で話を聞くことにした。
「中谷部長代理とは、仕事上のお付き合いが一番多かったものですから、よく飲みにも連れて行って頂きました」
村瀬は達彦と同世代で2,3才年上らしいのだが、気が合うらしく達彦は来る度に彼を専属担当者扱いにしていたので、こちらの社長も商談や接待は任せっきりにしていた。それでも経理上の問題等は全く相談を受けた事が無かったので、営業面だけを託されていたのだと説明された。
「それで・・・仕事の話は大体これで全部なのですが、実は私的な件で頼まれるというか、そういう成り行きになっていった事がありまして」
話が急に進まなくなってきたので、問題点に近づいてきた様だ。
「決して誰にも話さないと約束します」
沢村が再度念を押したので、覚悟ができたらしく話出した。
「5年前に名古屋の短大を卒業して、うちの会社に入社したきた事務員が居たのですが、彼女は頭も良く、来客の応対も如才ないので、社長もとても気に入って、秘書兼接客用としての仕事を受け持たされていました。外見は特に美人という感じではないのですが、控えめで理知的な態度は誰にも好感を持たれ、部長代理も当然彼女を可愛がり、仕事が終わると私と彼女を誘ってよく食事や飲みに行ったものです。彼女は飲んでも普段と変らず、個人的にも控えめな美しさが滲み出ている様で、素敵な女性でした」
「その彼女と、中谷さんが道ならぬ仲になっていった、という事なんですか」
「そうです、私は自分の会社の後輩でもあり、何とか彼女に諦めさせようと、年齢にあった男性と見合いじみたこともさせてみたのですが、一途に走り出した彼女には効果がありませんでした」
沢村は、達彦という男が分からなくなってきた。
たぶん井上と付き合う以前から、若い世間知らずの女性にも手をだしていたなんて、由起子が知ったら・・・とても彼女に話せることではない。
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