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唐木田通り 27

2007-01-04 04:40:07 | 唐木田通り
「それで、現在でもその彼女とは続いているのですか」
「続いています、彼女はこの会社を辞めていますが、今でも岐阜に住んでいます・・・その住まい探しをしたのは私なんです」
「あなたが面倒をみたのですね」
「みるようになっていったのです」
いまだに続いているのは、抜き差しならぬ事態に陥っているという事なのか、それでも由起子にはやり直そうと何度も頼んでいるそうだが、矛盾だらけだ。
「いまでもこちらに執着しているというのは、彼女の為なんですか、東京に連れてきた方が会いやすい訳ですから」
「それはそうする方法もありますが・・・」
また村瀬の歯切れが悪くなってきた。
「何か彼女のご家族との問題でもあるのですか」
「いや、そういうことは特にないのですが」
考えがまとまらないのか、落ち着きがなくなり、混乱している様子もみえる。
「村瀬さん、今日も暑いし、ビールでも飲みませんか」
「はあ、そうですね、それがいいかな」
一息入れようと乾杯した。かなり飲めるらしく、すぐにコップ3杯飲み干した。
「沢村さん、本当は今日ゆっくり泊まって、夜は長良川鵜飼いを見て頂こうと予定していたんですよ」
夕方名古屋に戻るという事にしておいた。
「仕事の都合で残念なんですが、やはり岐阜は鵜飼いと、清流ですか」
「そうですね、刃物の町関市、古い町並みが残されている美濃市、そしてもっと北上すると、水の城下町郡上八幡があります」
「郡上八幡て、お盆には徹夜で踊り明かすあの郡上踊りの」
「そうです、楽しいですよ、見る踊りではなく、踊る踊りといわれ、皆で踊り明かすのです」
「その熱気も凄いんでしょうね、きっと」
少しアルコールが回り、舌も滑らかになってきた。
「彼女が入社した年の夏、私がお膳立てをして、部長代理と三人で郡上踊りに行ったのです、それが結局きっかけとなって・・・」

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