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フクロウの街 2

2016-01-22 12:55:05 | ヒューマン
「引っ越すの?」
「この公団、もうじき立て直すのよ」
「そう、やはりこの近くがいいの?」
「別にこだわらないわ、仕事もまだみつかってないから」
「でも子供の学校もあるからね」
「いいのよ、学校はどこでも、家賃の安い所を探してくれない」
「東京都は高いから、千葉県にするかだね」
山路は結婚した数年間船橋市に住んでいた。
「そうしようかな、ここの地下鉄の終点は本八幡ね」
「そうだよ、今週の土曜日にでも見に行く?」
「それはいいんだけど、先立つものがねぇ」
山路は貯金もあったが、いまの給料は安すぎて毎月少しずつ貯金をおろさないと足りない状態だった。
火事で身の回りの物はすべて失い、彼女の家に転がり込んでいる男に未来などなく、ただ目の前の生活に振り回されていく、山路はそうした自分を醒めた目で見つめていた。
ともかく彼女の引っ越し費用を負担して一緒にいるしかない。
そんな事を考えていた時、啓子が就職先を斡旋してきた。
「この近くのパートに行っている友達がいてね、物流センターの事務が急に辞めて、男女問わずすぐに来れるひとを募集しているんですって」
「未経験でもいいのかな」
「大丈夫そうよ、行ってみれば」
山路はあまり気乗りはしなかたが、断る理由もなかったので、様子を見がてら行く事にした。
ス―ツを着るのが億劫になっている。啓子に連絡をとってもらうと、来週月曜日の朝10時に来てくれとのことだった。

当日啓子の家からゆっくり歩いても、10分ちょっとで倉庫の住所にある場所に着いたが、辺りを探してもマンションばかりで倉庫は見当たらない。
まわりを一周してさらに注意してみると、自動車修理工場の様な古い建物があり、2階に狭い事務所が見えたので、近寄ると丸一倉庫と書いた小さな看板があった。
錆びの出た階段を上ってドアをノックすると、ドアが開き痩せて目つきの鋭い男が出てきた。
「山路さんだね?」
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