こんにちは。
詩人 MIMI です。
いつも 読んでいただき
ありがとうございます。
本日は ちょっぴりせつない
ショートストーリーをお送りしたいとおもいます。
面影
地下鉄のドアが開いた
湿気を含んだ独特の油の匂い
私はこの空気が結構 好きだ
乗り換えのために降りた駅で
見覚えのある人を見かけた
これを逃したら
一生 会えないような気がして
目的の方向とは逆だが
追いかけた
勢いは始めだけで
声を掛けるまでいたらなかった
何やっている
衝動とはいえ
自分の行動が残念になり
責めた
彼女の存在があったからこそ
今の仕事をしている
だから
死ぬまでに もう一度会い
報告と感謝の気持ちを伝えたいと思っていた
以前会ったのは二十年も前
十八歳の春
自宅に向かう帰り道で一緒になり
話しながら歩いたのが最後だ
高校の三年間でお互いの興味が変わり
あまり話しが盛り上がらなかった事は
よく覚えている
中学と卒業後
彼女とは地元の駅の改札で顏を見かけた
どちらかが
なんとなくお互い気が付けば
ひとこと ふたこと
社交辞令のような会話をしていた
夏休みを過ぎると
徐々に変化していたリズムが
完全に合わなくなった
それ以降は見かけても
相手は僕に気づいているのかわからないが
なんとなく声を掛けづらくなっていった
彼女は改札口を出た
僕はその必要がないが
尾行は続けている
大きなターミナル駅なので
それなりに人は多かった
そのおかげで
きっと怪しまれていない はずだ
時間がたつにつれて
声をかけるタイミングが遠のき
心の中に
あの人
本当に あの人
不安がよぎる
いや
絶対に間違いない
あの面影は
あの人だ
そうはいっても
二十年も会っていない
いまさら どうだっていい関係だ
ただ僕が勝手に
死ぬまでに会いたい人 想っているだけだ
気が引ける
そもそも
この時点で変な奴なのに
これで声を掛けたら
もっと変なではないか
二十年だぞ
二十年
いまさらだよ
などと考えながら僕は彼女の
うしろ姿を見送った
まだ僕は死ぬわけにはいなないのだ
そう言い訳じみた言い分を
頭の中で何度も
繰り返し
繰り返し
唱え
徐々に足にブレーキかけ
その場に立ち止まった
彼女の背中を見えなくなるまで
私は目で追った
いつまでも 消えないでいてほしかった
ずっと あの面影を追いかけていたかった
しばらく 駅の喧騒に身を置き
私はひとり 過去を振り返っていた
最後まで 読んでいただき
感謝です。